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 もちろん、苦情を言われている方々の話だけを聴くのはフェアではありません。ということで、実際にプログラムに関係された方々の話を聴かせていただきました。

 その結果、

(1)については、金額が大きいため、ある程度大規模プロジェクトを経験した研究者を選ばざるを得なかった
(2)審査期間が短かったのは事実であるが、研究者や企業経営者などが3週間くらい缶詰になって審査を行った。景気対策の補正予算ということもあり、その実施を急がねばならなかった中で最大限の努力をした
(3)研究の実施については、事務作業を外部の機関に任せることができるので、ずさんな使い方にはならないはず。その点を含め、きちんと検査・評価を入れるつもり
ということでした。

 やはり、「補正予算であるため採択に時間をかけることができなかった」、「1プロジェクト当たりの額が大きすぎた」といったことが問題点としてあると感じました。

プロジェクトの見直し私案

 では、どうしたらいいのでしょうか。予算を凍結してもう一度、根本から見直すべきなのでしょうか。私は本プロジェクトに関与する立場にはありませんが、自分なりに調べ、考えたことをまとめてみると、以下のようになります。

(1)本プログラムの支援対象研究者は、ある程度本研究費を前提に体制作りなどを進めており、すべてをゼロにすることは難しい(それこそ官僚の企みに乗せられていると批判を受けそうですが、あまり混乱を起こすべきでないと思います)
(2)ただ、予算の圧縮は可能。現在プロジェクトの要求総額は約3600億円(要求額の単純総額)。これから研究の支援機関を決定するなかで要求額を予算の2700億円まで圧縮する予定。この予算圧縮プロセスに1400億円~2000億円といった最終予算を達成するための圧縮目標を設定し、予算を大幅圧縮することは可能ではないか
(3)予算の残りの700~900億円は次世代を担う若手研究のための研究に振り向けるべき。さらに、最大5年の研究期間を若手プログラムの場合は7~10年まで延ばす(日本学術振興会法の改正が必要)。5年後にプロジェクトがなくなると研究者が4年後くらいから次のポスト探しを始め、研究が停滞する可能性がある
(4)最も大事なことは、きちんとした評価。全体予算の1-2%を研究進捗や成果の評価に割り当てるべき。評価はプロジェクトを選んだ総合科学技術会議ではなく、外国人研究者も含めた、独立した組織が行うべき。

まずやるべきことは

 そうだとして、まずやらなければならないのは、採択された研究者の、現在の研究支援予算を公開することでしょう。採択された研究者は既存の研究予算を返上することになっていますが、それが本当に実施されるかはまだ不明確です。研究予算の集中の批判に応えるためには、まず現在の研究予算を公表する必要があります。

 そして、最先端研究開発支援プログラム見直しチームを設置して、制度設計をこれこそ短期間に行うべきではないでしょうか。本プロジェクトの支援会議(全体設計を実施)やワーキングチーム(評価採択を担当)と独立したチームを作り、もう一度制度や採択のプロセスなどを検証することが必要です。見直しの過程においては、若手研究者などの現場の声や国民が科学技術に何を期待するかなどの声を吸い上げるべきでしょう。

 民主党としては、是が非でも予算の圧縮を進めなければならない状況に立たされています。不急不要なものは切る、というのが基本方針となるでしょう。確かに、イノベーションの種を作る科学技術の振興は、投資しても成果がみえにくく、ついつい「不急」とみなしてしまいがちです。けれども、絶対に「不要」ではないはず。だから、他の予算とは一線を画し、執行すべきはきちんと執行しなければなりません。だからといって「すべて既存のままでいい」わけでもないのです。金額の見直しより大事なのは、制度の見直しなのだと思うのです。

藤末 健三(ふじすえ けんぞう)
早稲田大学客員教授 参議院議員
1964年熊本県生まれ。86年東京工業大学卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に行政官として入省。95年マサチューセッツ工科大学経営学大学院に留学、96年には同大学院とハーバード大学行政政治学大学院で修士号を取得。99年東京工業大学で学術博士号(Ph.D)を取得し通商産業省を退く。同年東京大学大学院工学系研究科専任講師に就任、2000年から同総合研究機構助教授。04年民主党参議院選挙に比例区で当選する。早稲田大学客員教授。公式ブログはhttp://www.fujisue.net
本稿は、技術経営メールにも掲載しています。技術経営メールは、イノベーションのための技術経営戦略誌『日経ビズテック』プロジェクトの一環で配信されています。