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 画像などコンテンツがウェブ上に溢れ、情報素材を容易に入手できるようになりました。更に編集加工に必要なツールも簡単に手に入るようになると、素材を編集する2次加工の価値は市場側に染み出してきます。そのような環境が整ってくると、完成度が高く、いじれる自由度の低い製品というものが段々と住みにくくなるわけです。完成度にこだわるのではなく、自由にいじれる拡張性の高いものが売れる時代がやってきています。今後のモノづくりは、作り手側がこだわって作りこんだ設計スペックのものだけでなく、市場が完成させる商品にも裾野がロングテールに広がっていくのでしょう。

 ソフト界で起きているこの現象は、ハード製品にも訪れようとしています。その端的な例がデコ電ことデコレーション携帯です。ギャルたちは各様にビーズやパーツを接着剤でデコ盛りにし、納得のいくまでカスタマイズしています。外観のみならず、送るメールも花やら星やらでコテコテに加飾です。これが男子の場合には、「痛車」界で花開いています。大自動車メーカーが入念に心を込めて作り上げた塗装の仕上がりを全否定するかのような、巨大なキャラのステッカーを自作してボディ全面に貼り付けます。これはキャラ画像が簡単に入手できるようになったことと併せて、近所のプロショップにあるラインプリンターを使って大版の印刷物を粘着シートに印刷できるようになった、という生産技術上の変革が裏にあります。要はデザイン工程や、実際の塗装の最終工程が自動車メーカーの塀の外に染み出したと見ることができます。設計技術と生産技術が外に染み出した途端に、ユーザー側に本来隠されていたカスタマイズの欲求が開放された状況なわけです。

 職人のこだわりというプロ意識が強すぎると、完成度を上げて、納得のハイレベルにまで達したものだけを市場に出すということになりがちですが、今後は時間を買うという意味でも、機能を早く出すことがより重要になるでしょう、むしろ、ユーザーのこだわりを受けるためには設計や生産技術を塀の外に出すことが大事なのです。囲い込むことに執着すると、足元をすくわれるということになりかねません。

 ユーザーによるカスタマイズとは、自分ならではの「使い勝手」や「心地よさ」につながるものであり、商品へのロイヤリティを高めるには欠くことのできない大事な行為です。製品とは市場が完成させるものだと悟り、最後の調整シロは市場にゆだねる勇気が求められます。くどいようですが、カレー・ルウを思い浮かべてみましょう。料理をする人によって、隠し味に醤油を差したり、ローリエの葉で風味を付けたりと、こだわりの手順を反映させる「遊び」がありつつも、完成したカレーは絶対に失敗しないという安心感を提供しています。昔からある典型的なプラットフォームです。

 拡張性の高い着物やカレー・ルウですが、素材そのものの完成度が極めて高いところも特徴です。世界中に数ある民族衣装の中でも、西陣や友禅などの織物や染色の技術は特筆すべきレベルです。組み合わせなど最終工程の調整の妙は市場に預けつつ、プラットフォームそのものの品質を執拗に作り込むことは重要です。職人のこだわり的な部分は昔も今もこれからも、日本のモノづくりの大事な原動力であり続けるでしょう。ただ、そのこだわりを発揮する機能の領域が動いていることに対する気付きが求められることになると思います。