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 会社てェのは大変ですナ。とにかく、外に打って出る前に、会社の中の調整、稟議とも言いますが、偉いシトに分かって貰わなくちゃあいけない。これが大変な作業なんです。

 この間もこんなことがありました。ある会社と事業提携をしようということになり、担当課長から上、つまり、部長から役員へと稟議を上げていったんですが、担当がクタクタになっちまうんです。担当者の愚痴を聞くアタシもイライラする話、まァ聞いてやってください。

 「次郎さん、この企画書を説明すると、お偉いサン、決まって同じことを言うんですよ」。担当課長、相当イラ立ってます。「『聞いてない』、そう言うんですけど、当り前じゃありませんか、初めて説明するんですから」。確かに、新しい事業企画、そして、それを初めて説明するために企画書を提出しているのですから、全部、お初のお話ですワ。課長が続けます。「言ったら怒られるから言わないけど、『何で最初に相談しないんだ、いきなり持ってこられても判断できないじゃないか』は、ないでしょうが! あなたの判断はどうか、そこを聞きたいのですよ、ね、次郎さん」。そりゃァそうだ。企画書を読んで判断してくれれば、それでいいてェことですよ。最初から相談するなら、ハナからお偉いサンが担当すればいい話。「挙句に、次郎さん、何て言ったと思います? 『他の役員は何て言ってた?』ですって、もう、自分で決めろっ! あきれますよ。ったく、こんな話、提携相手に恥ずかしくってできませんよ」。それもごもっとも。うちの会社がこんなレベルなんて知られたら、アタシだって恥ずかしい。「で、どうなった?」。「もうバカバカしいのを通り越して気が抜けましたよ。『まあ、キミがやりたいのならいいじゃないか。頑張りたまえ』で終わり、これって何なんですか!」。

 結果オーライですが、この話、結構、深刻ですナ。第一に、意思決定のできない者が上部にいて、結果、障害になっていること。そして、もう一つは、社内でのこのような調整に、多大の時間と労力を掛けているという事実です。

 そうそう、アタシにも経験があります。開発部にいたころ、お偉いサンに新商品の説明をしたら、「俺は聞いていない。いきなり言われても分からん。しっかり、企画書にして説明してくれたまえ」。で、企画書を作って説明したら、「ウ~ン、よく分からん。他の役員にもよく聞いて、それで進めてくれ」なんて、一度や二度じゃァありません。そりゃあ会社てェものに、上下と順番があるのは知ってますよ。でも、この場合は障害になっているだけで、内向きにエネルギーを使ってヘレヘレ。本当は、外に対してエネルギーを使うのが当り前なのに、社内での消耗戦てェもんですナ。

 ひとしきり、言うだけ言って気が晴れたのでしょう。担当課長も収まってきましたよ。「じゃあ行くかい?」。いつもの赤提灯。今日はお局はお休みらしく、代わりに例のアスパラガス(経企室の若手。青白くヒョロヒョロなので、付いたニックネーム)を連れて行くことに。

 「課長も大変ですね。そんなコト、ボクにはできないなあ。第一、強引に自分の意見を通すなんて苦手でイヤです」。おいおい、それでおしまいか。参考になったとか、どうしたら頑張れるのか、そこのところを聞きたかァないのか。そう言おうと思ったハナに、「ボク、草食系ですから、ぶつかるような仕事はできません。穏やかな仕事、それだけしたいんです」と。

 飲むほどに酔うほどに、とうとう課長がアスパラガスに説教を始めました。「おいアスパラ、お前、ビジネスなんてェのは戦争なんだよ。勝つか負けるか、仕事てェのは戦いなんだ。なのに、穏やかにィ? 冗談じゃねェ! テメエの好きなことだけやれたら世話ァねェ。ええっ、一度でもそういう立場になったら、やるっきゃねェんだよ、モヤシ!」。ヤレヤレ、アスパラガスがモヤシになっちまいましたョ。こっちは肉食系、酔いが回ってさらに凶暴になったようです。

 それで、さすがのアスパラも反撃か、と思ったら、「課長、大人気ないですよ。僕たちは同じ会社の人間ですから、争う必要はないですよ。落ち着いて…」。ノレンに腕押し、それとも、カエルのツラに○○でしょうか、意に介しません。さらに、「課長、分からない人がいるのが社会。会社の中も同じですよ。力を抜いて、なるようになる、それで行きましょうよ」だって。えっ? アスパラ、気の利いたことを言うじゃあねェか。お局がいないと、大人びて見えるのが不思議です。

 そう言えば、思い出しましたよ、誰かが言ってた「ビジネス戦士」。確かに、ビジネスなんてェのはしょせん、戦争かもしれませんヤネ。でも、そうだとしたら、余計に、内なる消耗戦はいけません。戦う相手は外にいるのですからネ。