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 また、その他EU加盟国の従業員経営参画制度は下表のようになっており、多かれ少なかれ、労働者代表制度を採用している国が大勢である。

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日本にはどういう制度がふさわしいのだろうか

 その国にはその国特有の社会的背景・経営風土・慣行慣習があり、欧州諸国での議論・実践をそのまま日本に持ってくることができないことは当然である。ただし、各国の従業員経営参画制度は一定の成果を上げており、日本の制度を設計する上で参考になる。日本をとりまく環境の変化に鑑み、ヨーロッパを参考にすることは長期的視点としては必要なのではないだろうか。

 たとえばドイツでは、労働者が経営への関与を深めることにより、特許出願は減少せず、生産性もわずかだがむしろ上昇した、ストの日数も短くなったとする調査結果がある注1)。一方で、制度の効果に懐疑的な調査も多数あり、経済全体の因果関係からガバナンス問題だけを抽出することは困難であることを前提にしても、労働者の経営参加推進が31%もの株価ディスカウントをもたらす、と結論づけたデータもある注2)

注1)特許権については、Kornelius Kraft/Jorg Stank、 Die Auswirkungen der gesetzlichen Mitbestimmung auf die Innovationsaktivitat deutscher Unternehmen、 124 Schmollers Jahrbuch 421(2004)参照。生産性については、Felix FitzRoy/Kornelius Kraft、 Co-Determination、 Efficiency、 and Productivity、 43 British Journal of Industrial Relations 233(2005)参照。

注2)共同決定制度を3分の1モデルから準同数モデルへ移行することに関して。Gary Gorton/Frank A.Schmid、 Capital、 Labor and the Firm: A Study of German Codetermination、 2 Journail of the European Economic Association 863(2004)

 成功例とされるドイツモデルは、EU加盟国すべてに影響を与えているが、その特有の歴史が成功要因であったことも忘れてはならない。第2次大戦後の復興が優先であるという労働者と経営者の共通認識があったこと、労働組合が政党から全く独立していること、社会保障制度の発達により、他国と比して労働者自身が技術革新に積極的に取り組むこと、などである。

 こうした先行事例の効果や背景を見極めながら、日本における制度のあり方を慎重に検討していきたい。

藤末 健三(ふじすえ けんぞう)
早稲田大学客員教授 参議院議員
1964年熊本県生まれ。86年東京工業大学卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に行政官として入省。95年マサチューセッツ工科大学経営学大学院に留学、96年には同大学院とハーバード大学行政政治学大学院で修士号を取得。99年東京工業大学で学術博士号(Ph.D)を取得し通商産業省を退く。同年東京大学大学院工学系研究科専任講師に就任、2000年から同総合研究機構助教授。04年民主党参議院選挙に比例区で当選する。早稲田大学客員教授。公式ブログはhttp://www.fujisue.net