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 こうした人間の自己防御機能には、「苦痛を和らげる」という対症療法的なもののほかに、「めちゃくちゃ従順になる」という根治療法的な効能もあるのだという。たとえば睡眠時間を1日3時間に制限し、それを1週間続けさせる。すると人はかなりヘロヘロになる。このような状態になった人はおそろしく従順で、何かを説けば素直に頭から信じ込んでしまうのだと。この原理は広く知られたもので、宗教の修行プログラムなどの中にはよく組み込まれているものだとうかがった。

 似たような話を聞いたことがある。江戸時代、反抗的な囚人の食事は塩抜きにするなどということが行われていたらしい。これを続けているうちに囚人は弱ってきて、従順になるのだという。健康尊重主義の今日にあって塩は「高血圧の元凶」と認識され、避けられがちな存在になっている。けれども本来、塩は人体に欠かせない物質である。ところが、排泄や発汗などによって塩はどんどん体から抜けていく。それに見合う量が補給されれば問題ないが、それが絶えると代謝障害が起き、ひどい場合は死に至る。つまり、何も暴力などに頼らずとも、塩分を含まない食事しか与えないということだけで、囚人の肉体を危機的状況に追い込むことができるのである。

 その方の説明によれば、脳内麻薬に関する研究はベトナム戦争、冷戦の終結で大幅に縮小され、研究者は野に下った。彼らは「食べるため」にそのビジネス応用に知恵を絞り、「能力開発」などさまざまな分野でそれを展開していったらしい。その共通点は「脳内麻薬を利用することによって、人々の精神構造をある目的に適したよう再構築する」ことだという。

トヨタ生産方式の真髄

 そんな思い出し話をしていたら、藤堂さんが「そうそう、それだよ、トヨタ生産方式の真髄は」などと言い出した。

 かわいそうに。

 このところお疲れなのである。で、ついにそんなことまで口走るようになってしまったか。そう同情しつつ耳を傾けてみると、当人は大まじめらしい。