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出典:宇宙戦略本部資料より抜粋
出典:宇宙戦略本部資料より抜粋

 ただ残念なことには、「どのようにして産業規模を倍にするのか」具体的方策・道筋が見えていない。提言案では一応、
(1)小型衛星・小型ロケットによる新たな市場の開拓
(2)衛星・センサーのシリーズ化の推進
(3)リアルタイムの地球観測衛星網の構築
(4)衛星データ利用促進プラットフォームの構築
などの新たな市場を定義付けている。しかし,それぞれの市場規模の予測やどれだけのシェアをわが国が握るかといったレベルまで分析されるべきではないだろうか。

 同様に、「自律性確保に必要な基盤技術の獲得・確保」という章では、
(1)我が国として、宇宙活動の自律性を保持し続けることは必要不可欠
(2)輸送系、衛星系(バス、センサ)など、長期的な視点に立った弛まない新たな技術開発を実施し、総合的な技術力を継続的に発展・向上
(3)戦略的な部品の開発・確保の推進
とされているが、やはり技術の分野でもテクノロジー・ロードマップといった全体の俯瞰図がなければ戦略的な技術の獲得や維持はできないと考える。

 宇宙技術は打ち上げ技術、衛星技術、センサ技術だけではない。衛星が集めたデータの利用・処理技術なども重要である。また、20万点を越える部品の管理技術・システム化技術など最先端の宇宙技術が他の分野まで普及することも考慮に入れる必要があると考える。当然、安全保障上でわが国が保有すべき技術の確保も考えなければならない。

宇宙政策のシンクタンクが必要

 筆者はつねづね、宇宙政策を専門とするシンクタンクを作る必要があると考えている。大学などにシンクタンクを作るために、宇宙戦略本部の研究費を10億円規模にすべきではないかとも考えている。たしかに、JAXAの調査分析機能も非常に高いものがあるが、やはり複数の研究機関が競争して研究を進めなければ政策の幅がなくなるし、研究が活性化しないとも考えるのだ。

 たとえば米国には2007年まで、NASAの資金提供による独立組織として、NASAの将来のミッションについて調査する、NASA Institute for Advanced Concepts(NIAC)が存在した。筆者も滞在したことがあるが、Washington, D.C.に位置するシンクタンクCenter for Strategic and International Studies(CSIS)には宇宙政策部門があり、また、ジョージタウン大学の宇宙政策研究所の所長にも先日会って議論を行ったこともある。わが国で現在、宇宙政策を専門とする欧米型のシンクタンク設立を目標として活動をしている、「宙の会」(そらのかい)も注目だ。

 わが国にも優秀な宇宙政策の研究者がたくさんいるが、組織的な活動にはまだいたっていないと私は感じている。折角立ち上がった宇宙戦略本部が本当の意味で「戦略」を構築するためのインフラ作りが必要だ!

表●宇宙政策に関わる調査研究を活動の一部に含むシンクタンク
組織名組織形態対象分野職員数*
(内、研究員数)
年間予算額*
日本
未来工学研究所
財団法人
科学技術全般を中心とする幅広い分野
34
(31)
5.5億円
(2008年度正味財産)
米国
Center for Strategic and International Studies(CSIS)
独立機関
戦略・国際問題に関するあらゆる政策分野
2152870万米ドル
(2009)
米国
Cato Institute
独立NGO
安全保障を中心とする内外のあらゆる政策分野
50~1002000万米ドル
(2006)
米国
Center for Defense Information (CDI)
独立NGO
米国の安全保障、国際安全保障及び防衛政策
30~50
(10~30)
630万米ドル
(2006)
英国
The International Institute for Strategic Studies (IISS)
独立機関
軍事を中心とする国際的な戦略に関する課題全般
69
(30)
710万ユーロ
(2006)
イラン
Sharif Think Tank (STT)
独立NGO
様々な戦略的課題
14
(8)
5億イランリヤル
(2004)
*「職員数」「年間予算額」とも、組織全体に対応する数。宇宙政策に係る人数・金額は不明。