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技術力

出典:文部科学省資料
マイクロ波放電式イオンエンジン
出典:文部科学省資料

 「はやぶさ」の開発費は130億円。宇宙プロジェクトとしては格安である(国際宇宙ステーション関連のわが国の予算は年間約200億円以上)。その中で、(1)新型のマイクロ波放電式イオンエンジン技術、(2)地球基地局からの支援なしに目標に近づいたり姿勢を制御する自律航法技術――などが開発実証された。例えば、長距離飛行で使われたイオンエンジンはNECが開発したものであり、NECは今後海外への売込みを検討している。

長期的計画が鍵を握る宇宙政策の特性

 「はやぶさ」は14年前に計画が始まり、そしてやっと成果が出たものである。このようにロケットや衛星の研究開発には長期の期間が必要となる。

 2008年に私も関与した「宇宙基本法」においては、この「長期的な計画」を明確に書き込んだつもりだ。一般的に5年間の基本計画(IT基本計画、科学技術基本計画など)と違い宇宙基本計画は、「今後10年を見通して5年間に実施することを決める」ものとしている。つまり、宇宙政策にはより長期的な視野が必要だからとの思いからそうしたわけである。

 実際、2009年には「宇宙基本計画(PDFの資料)」が策定され、基本計画の下に様々な検討会などが動き、新たな提言や計画が作成されている。しかしながら、宇宙産業関連の方々の話を聴くと、「計画はかかれるが決定されない」という状況にあると言う。予算もどうなるか見えず、将来の計画も見えず、企業も身動きが取れないと言うのである。

事業仕分けの反省もふまえて

 はやぶさの成功とともに批判されたのが「事業仕分け」である。「はやぶさ2」の後継機の開発予算17億円が、政権交代のあおりで5000万円に、さらに事業仕訳で3000万円に減額されてしまったという。確かに、スパコンの研究開発も同じであるが、科学技術に造詣が深くない方が事業仕分けを担当したという面もあると思う。

 しかしながら、もっとも大事なポイントは「宇宙政策の長期的な戦略を説明できなかった」ことに問題があるのではないかと考えている。スパコンやGXロケットの事業仕分けの説明を見て、(1)技術を深く理解していない役人が説明を行ったこと、(2)科学技術という長期的なプロジェクトの成果や位置づけを明確に示せなかったということ――が遺憾であった。また、必要なのはプロジェクトだけではなく、宇宙基本法にもうたっているように、宇宙活動法の整備など具体的法制化も進行させることだ。宇宙政策の長期的な戦略を決めることと同時に行わねばならない。そのためにも、明確に政府の宇宙政策を一元的に行う「宇宙庁」を設置し、明確な責任の下に宇宙政策を戦略的に行う体制を整備すべきである。

宇宙への挑戦と冒険を支えるのは政府

出典:JAXA
「はやぶさ」が大気圏に突入した際に発した火球(6月13日23:00頃撮影)
出典:JAXA

 さて、はやぶさ物語には「挑戦には失敗も成功もない。すべてうまくいけば挑戦ではない。まったく計画通りにいけば、冒険ではない」というメッセージがあるという。挑戦や冒険のリスクを国がとり、そして「戦略的に」宇宙の開発利用を進めていかなければならない。

 私も今月から国家戦略室調査委員会委員に就任し、成長戦略策定の中で宇宙政策に具体的に関与していけるようになった。まだまだ大きな権限を持っているとは到底言えない身分ではあるが、なんとか少しでも夢をつなげていきたい。