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 菅直人総理は、6月11日の所信表明演説にて財政再建と経済成長、社会保障の充実に三位一体で取り組む「第3の道」を歩むとの決意を示した。第3の道とはいったい何なのか、そしてこれは少子高齢化の中で財政赤字をひた走る、先進国中最悪の状況にあるわが国の病に対する処方箋となりうるのか。菅総理がどういう経緯で第3の道にたどりついたのか、そしてマスコミやエコノミストはどう評価しているのか、菅総理を身近で見てきた筆者が分析してみる。

「第3の道」とは?菅発言より

 2009年9月の政権交代後、菅氏は副総理・国家戦略担当相というポジションからわが国全体の政策を立案・主導することとなった。

 まず、菅戦略担当大臣(当時)が作成した『「新成長戦略(基本方針)」について』(2009年12月30日閣議決定)において、「私たちは、公共事業・財政頼みの「第1の道」、行き過ぎた市場原理主義の「第2の道」でもない、「第3の道」を進む。それは、2020年までに環境、健康、観光の三分野で100兆円超の「新たな需要の創造」により雇用を生み、国民生活の向上に主眼を置く「新成長戦略」である」としている。

 そして、2010年1月29日衆院本会議において、菅直人財務相(当時)は、「これからの経済成長は、公共事業に頼るのでも、行き過ぎた市場原理主義に訴えるのでもなく、知恵を使って新たな雇用、需要を生み出すという第3の道を歩むべきものである」と表明した。

 さらに、総理就任後の所信表明演説でも『産業構造・社会構造の変化に合わない政策を遂行した結果、経済は低迷し続けました。こうした過去の失敗に学び、現在の状況に適した政策として、私たちが追求するのは「第3の道」です』と述べ、さらに菅総理は、「強い経済、強い財政、強い社会保障」を一体として実現するとしている注1)

注1) 菅財務大臣としての投稿論文「公共事業でも効率化でもない「第3の道」を行く」(『エコノミスト』,2009.12.22, p.40.)に第3の道について詳しく述べられている。

 このように、立場は少しずつ変わったが、菅氏は一途に第3の道を追い求めているし、この政策にかけてきて、周到に準備を進めてきたことが見て取れる。

マスコミは現在どう見ているのか?

 この第3の道について日経新聞はその社説で「労働力人口が減るなかで生産性重視の政策を否定すれば、成長は可能なのか、大いに疑問がある」とし、同じく読売新聞は「それだけで、名目成長率3%超という「強い経済」が実現するほど甘くはあるまい。急造の演説とはいえ、成長分野ごとに優先順位を定め、予算や施策に反映させる方向性を示さなければ、説得力を持たない」とした。朝日新聞は、基本的には否定しないものの「財源確保のために増税すれば景気を失速させかねない」と、その政策が困難であることを暗示している状況だ。

 各紙の姿勢を総括すると、大まかな意味では理解できるが、その具体的な姿がまだ見えないという感じの捉え方であるといったところか。