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日印原子力協定締結交渉が始まる

 6月28~29日、東京にて日本とインドの両政府による原子力協定の第1回締結交渉が行われた。原子力協定は、核兵器の不拡散のために、原子力技術を有する国が原子力発電の技術や機材を他国に輸出する条件として、その技術や製品を核兵器開発に転用しないことを相手国と取り決める協定である。しかしながら、核不拡散条約(NPT)に非加盟で核兵器保有国のインドとの原子力協力には、国際的な核兵器不拡散の体制に穴を開け、弱体化させるとの懸念もあり、多くの新聞社は単純にこの点だけを批判している。

 私は、単に日印原子力協定だけを議論するのではなく、長期的に戦略的に「わが国がアメリカと協力し、原子力の平和利用」を進めるべきだと考えている。今回は、その大きな枠組みについて述べたい。

米印及び仏印原子力協定の影響

 インドの原子力協定については、2008年10月、アメリカとの間で署名がなされた。そのすぐ後にフランスとも署名が行われた。この結果、「インドの原子爆弾の保有」が国際的に認められることになった。インドはNPTに加盟していないが、原子力協定により国際原子力機関(IAEA)の保障措置を受け入れるなどを要件に原子力協力を得ることを認められることとなったのである。

 二つの原子力協定はアメリカとフランスが勝手にインドと結んだものではない。原子力に関係する45カ国が参加する国際会議「原子力供給国グループ(NSG)」ですべての参加国の賛成を得た上で結ばれたものである。つまり国際社会でインドの原子力協定は認められたものである。

 私は、アメリカとフランスがインドと原子力協定を結んでしまった現在、わが国は、より核兵器不拡散を徹底した原子力協定をインドと結ぶことにより、唯一の被爆国として核兵器不拡散・廃絶に向けて国際社会に貢献すべきだと考えている。

温暖化対策で大きな役割が期待される原子力発電

 原子力発電(原子力の平和利用)についての期待が世界的に高まりつつある。原子力発電は放射性廃棄物などの課題があるものの、温室効果ガスである二酸化炭素を排出しないエネルギー源として地球温暖化対策に位置づけられつつある。例えば、2008年7月に北海道洞爺湖で開催されたG8サミットの首脳声明においては『気候変動とエネルギー安全保障上の懸念に取り組むための手段として、原子力計画への関心を持つ国が増大した。核不拡散・保障措置(Safeguards)、原子力安全(Safety)及び核セキュリティ(Security)の「3S」が原子力の平和的利用の根本原則であり、3Sに立脚した原子力エネルギー基盤整備に関する国際イニシアティブが開始する』と表明された。つまり、核兵器を持つ国を増やさない「核不拡散」だけでなく、原子力安全と核セキュリティを確保しながら、原子力発電など「原子力平和利用」を同時に進めることが必要であることが国際会議で明確にされたのである。