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鐶付のモチーフは、鬼や獅子、猿や貝、木の実などの他に、傘や冠といったものまで幅広い。十六代大西清右衛門作「廣口釜」(浄信寺蔵)
鐶付のモチーフは、鬼や獅子、猿や貝、木の実などの他に、傘や冠といったものまで幅広い。十六代大西清右衛門作「廣口釜」(浄信寺蔵)

 挽き上がり、装飾を施されている鋳型にはすでに鐶付(かんつき)の鋳型も埋め込まれている。釜を持ち運んだり釣ったりするための釜鐶を通すための孔が開いた耳である鐶付は、デザイン的にも釜のアクセントとなる重要な部分である。比較的多く見られるのが鬼の顔をかたどった鬼面、他に獅子咬、龍、猿などの動物をモチーフにしたものから、山の形をした遠山、あるいは亀や蜻蛉といった昆虫、竹節や松笠といった植物、笛や社殿をかたどったものまで、様々な意匠が存在する。

 それだけに、鐶付は作り手の創造力と技術が端的に現れる部分でもある。例えば初代大西浄林の鯰や二代目の浄清が作った海老の鐶付などは、長い髭まで再現され、圧倒的な技術で見る者の目を引きつける。時雨釜と呼ばれる雨粒のような効果を施した肌に、破れ傘の鐶付を付けた釜や、天明釜の作り手が「帆立貝」を鐶付に仕立て上げた釜などは、そのユーモラスなアイデアや形状で、見る者の気分を柔らかくほぐしもする。地文などと同じく、施主の素養やセンスもどうしても現れてしまうのだ。

原型を元に鐶付の鋳型を制作する。(写真:大西清右衛門美術館提供)
原型を元に鐶付の鋳型を制作する。(写真:大西清右衛門美術館提供)

 これらの鐶付の原型を新たに作る際は、粘土や蜜蝋、石膏などを使って造形する。出来上がった原型に土をかぶせ、固めてから抜き取ると鐶付の鋳型が出来上がる。

 その鋳型を釜本体の鋳型に埋め込み、さらに装飾を施し炭火で素焼きすれば、鋳型は完成する。次は、鋳型の中に詰める中子の制作である。一般的に使われる中子は、「込め中子」もしくは「削り中子」と呼ばれるもので、乾燥した甲(釜の上部)と底(同下部)の鋳型の中に、それぞれ砂、土と、粘土を水に溶かした埴汁(はじろ)を混ぜ合わせたものを詰め、乾燥させて作成する。乾燥してから鋳型をはずすと、釜の形に固まった中子が出てくる。これを釜の厚み分だけへらで削り、炭粉を水でといた「くろみ」を塗って、溶かした鉄が焼き付かないようにする。大西家ではこのような方法が代々伝えられてきた。

十六代大西清右衛門作「夜学釜」(個人蔵)
十六代大西清右衛門作「夜学釜」(個人蔵)

 一方、芦屋で作られていた中子は「挽き中子」と呼ばれるもので、縄を巻いた上にもみ殻、すさ(藁くず)、髪の毛などを混ぜた土を塗り、軸を回転させる方法で作成する。回したことで出る挽き目がうっすらと釜の内側に浮かび上がることが特徴だ。鋳型の中に入れる時は、中の縄を抜いて、中空の状態にする。釜作りにおいてこの手法は芦屋釜の終焉とともに途絶えていたが、それを大西が復元した。

「もともと親父も復元したかったんです」。芦屋釜の写しを作っても、この手法が再現できないと、形を写すことしかできない。そう考えている父親の思いもあって、大西は復元に挑戦した。