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議論が活発化する企業関係税制

 現在、民主党内・政府内で来年度税制改正の議論が行われている。

 私は「税制が国の基盤」との考えから、税制改正の議論には民主党税制改革プロジェクトチームに参加し提言を行っている。特に関心が高いのが「企業関係税制」である。企業税制に関しては今まで何回か投稿させてもらっているが、政権与党になり自分の考えを直接実現できる立場になっており、また新たな視点から報告させていただけるのではと思っている。私がターゲットを絞って活動しているいくつかの事項について、今後述べていきたい。

一歩前進の税制改革

 中でも「原料ナフサ課税の非課税化」については、なんとか実現しようとしている。これは石油化学産業などで利用する原料ナフサにわが国だけが課税し、二年に一回の見直しがある租税特別措置法で免税措置しているものを、海外と同じくそもそも「非課税」にするというものである。

 この課税措置で課税されるはずの額は約3.7兆円。なんと石化産業のすべての利益を超えているのである。つまり免税措置がなくなれば石化産業は利益が出せなくなるのである。

 私がこの問題に関与したのは2008年4月の租税特別措置法の停止の時だ。ガソリンにかかる暫定課税(1リットルあたり25円)を引き下げるため、租税特別措置法を止める担当者になったのだ。租税特別措置法を止めると、ガソリンへの暫定課税を止めるだけでなく、「原料ナフサへの免税措置」も止めることになるのである。そこで石油化学産業の関係者や政府担当者と相談し、「原料ナフサへの免税措置のための法律案」まで作成したのだ。

 これは石化業界の方々には大きなインパクトがあった。租税特別措置法が止まれば、原料ナフサに課税され、利益が引き飛ぶ危険性に常にさらされていることが判明したからだ。

 それから、同僚議員と一緒に党内で勉強会を開催し、党内と政府から声を出していった。その成果もあってか、あと一歩で原料ナフサへの非課税が実現しそうな状況にある。

旧政権の利権だった租税特別措置法

 実はこの原料ナフサへの免税といった租税特別措置法は、旧政権の権益となっていた。それは、政府から補助金をもらった企業は政治に寄付ができないという規制があるが、税金を「安くしてもらった」企業にはそうした規制が適用されないため、政治家への寄付が普通に行えるというルールであるため、税制優遇措置を差配し、企業からの寄付を集めていたのではと見られていたのである。免税措置を受けた企業名が公表されていないため、断言はできないが、免税措置を受けていると推察される企業が旧与党に多額な寄付をしていたのである(この問題については週刊ダイヤモンド2009年1月号「税のお目こぼしをゆるすな!」に詳しく書かれている)。

成立した租税特別措置透明化法

 そして、平成22年3月24日に「租特透明化法」(租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律)が可決・成立した。峰崎財務副大臣(当時)が旗を振り、免税措置を受けた企業名を公表する法律が成立したのである。

 この法律により、①適用実態調査の実施等〔法人税関係特別措置の適用を受ける法人は、適用額明細書を法人税申告書に添付(平成23年4月1日以後終了する事業年度の申告から適用)〕、② 報告書の作成と国会への提出(財務大臣は、毎会計年度、租税特別措置の適用状況等を記載した報告書を作成。内閣は、これを国会に提出(翌年1月に開会される国会の常会に提出)――が実施されることとなる。

 やっと野党時代に提言していたことがひとつ実現できたのである。

出典:財務省資料
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不要な租税特別措置の廃止

 峰崎財務副大臣(当時)の下に同時に租税特別措置制度の見直しも進んだ。

 今年度の改正において、廃止された制度が12、縮減が29にも達したのだ。筆者は既得権益に大きくメスを入れることができたと考えている。

 この動きは来年度税制見直しに向けても動いており、引き続き制度の廃止や縮減が議論されている。引き続き二桁の制度が廃止されると見ている。

出典:財務省資料
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 税制議論というとすぐに消費税の話しばかりしがちであるが、小さい分野とはいえその他の税制は着実に進化している。このような小さな仕事を着々と積み重ねていきたい。

 また、大きな税制の改正については、民主党に「税と社会保障の抜本改革調査会」(会長=藤井裕久元財務相、筆者は副会長)がこの10月に設置され、議論が進んでいる。

税制には、①公共サービスの費用調達機能、②所得の再分配機能、③景気の調整機能があり、社会制度を大きく変えるものだ。政権が変わったことをもっとも明確に示すことができる政策である。

 これからも税制の改革にとり組んでいく。