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東日本大震災で大きな影響を受けた半導体産業

 日本の半導体工場で現在主流といえるのは、メモリを生産する工場と、マイコンを生産する工場だ。このうちマイコン工場は東日本に立地しているところが多く、今回の震災により直接被害を受けたところが多い。

 マイコンはあらゆる家電製品や産業用機器、医療用機器等に使われているため、その影響は大きい。また半導体を生産するために必要なクリーンルームは24時間運転が必要なため、今後も停電によって操業に影響が生じる恐れがある。

 国内の主要半導体工場の震災による影響は、私が報道などで把握する限り以下の通りである。

◆ルネサスエレクトロニクス
  ・那珂工場(茨城県)――建屋・生産設備に被害あり、生産停止。現在生産設備の復旧作業中。6月15日に操業再開。
  ・ルネサス山形セミコンダクタ鶴岡工場(山形県)――建屋・生産設備被害なし。3月20日より生産を再開。
  ・ルネサス北日本セミコンダクタ津軽工場(青森県)――建屋・生産設備に一部被害があったものの、3月20日より生産を再開。

◆富士通セミコンダクター
  ・岩手工場(岩手県)――建屋・生産設備に一部被害があったものの、4月3日から一部操業を再開。
  ・会津若松工場(福島県)――建屋・生産設備に一部被害があったものの、3月28日から一部で操業を再開。

◆岩手東芝エレクトロニクス
  ・北上工場(岩手県)――建屋・生産設備に被害あり。4月11日から一部生産再開の予定も7日の余震で見送り。電力不足の長期化が予想されるため、一部製品については、大分工場等で対応。

日本の半導体産業の現状

 一般的に半導体というとCPUやメモリという印象が強い。半導体=サムスンやインテル、というイメージだ。確かにかつて日本が強かったDRAMにおいてはサムスンやハイニックスという韓国メーカが席巻しているし、また、フラッシュメモリもサムスンがトップシェアとなっている。

 一方で、半導体全体の売上高の5%を占めるマイコンにおいて日本企業はまだまだ力を保っている。2009年の実績を見ると、ルネサステクノロジとNECエレクトロニクスがそれぞれマイコン世界シェアの1位(18%)、2位(12%)を占めている。この2社は2010年にルネサスエレクトロニクスに統合しており、マイコンの世界シェア約3割を占めている。特に自動車用マイコンにおいてはシェアが4割となっており、業界での存在感は依然として大きいのだ。大震災はこのマイコン工場に大きな打撃を与えている。

半導体の生産停止に伴う経済への影響

 マイコンはカスタム品であるため、短期間で他社が代替生産することは困難である。そのため、マイコンの生産が停止すると、世界中の自動車(特に日本製の運転制御チップ依存度の高い日本車)、薄型TV、携帯電話、工作機械などの生産に影響を及ぼす可能性がある。政府の推計では、半導体関連の生産停止による世界への影響は40兆円にも達する可能性がある。

 具体的には、自動車の運転制御用マイコン最大手、ルネサスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)は6月15日に操業再開の見通しと発表したが、操業停止が1か月半続けば、世界の自動車生産の6.5兆円分が失われる可能性があると試算されている。

 また、材料調達の影響でメモリの生産が停止すると、成長市場のApple、Blackberry、Nokia、SonyEricssonなどのスマートフォンやタブレットPCなどでの日本製メモリのシェアが落ちる可能性が指摘されている。特に、世界シェアがトップ(約3割)の信越化学工業(白河工場)や2位のSUMCO(山形工場)の半導体シリコンウエハー生産が停止したため、在庫でやりくりをしている状況だ。復旧に時間がかかれば世界全体の半導体生産に影響があり、これを使用する電機産業、サービス業等も含め、幅広く生産に影響が及ぶ恐れがある。

半導体産業の新生を