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 企業でもエンジニア出身で経営者になる方は、技術の理解が深いだけでなく、難解な技術を聞き手に応じてわかりやすく説明できる、コミュニケーション能力が高い方が多いです。技術者といっても役職が上がるほど、社外では顧客や証券アナリスト、社内では営業・総務・経理・・・といった技術者以外の人とのコミュニケーションが必要になりますから。技術者の間だけで暗黙のうちに理解できることを、専門外の人達にもわかりやすく伝えることができる、コミュニケーション能力が必要なんですね。

 理系のエンジニア・研究者は普段は「正確に計算する」といった正確さを必要とされる仕事をしています。話し方も、正確に事実を伝えようとして、かえって冗長になったり、わかりにくくなってしまう。一方、みなさんの会社の経営者の話を聞いてみると、技術的には少々間違っていても、擬音語や擬態語をつかって、直感的にわかりやすい表現を使われていることが多いのではないでしょうか。

 私が東芝でフラッシュ・メモリを開発した際に、大変お世話になった東芝のトップの方に新しい技術開発プランを提案したところ、

「お前は失敗したら切腹する覚悟があって提案しているのか。俺が介錯してやるぞ」

などと、とっても物騒な表現で計画の妥当性やリスクを問い質されました。これは半ば冗談だったとは思いますが、「あなたは技術的なリスクをちゃんと精査しましたか」と上品に言われるよりも、すっとよく理解できます。

 現在の日本は、原発や放射能といった科学的・技術的問題が日本という国の方針を左右する大きな問題になっています。エンジニアの技術に関するコミュニケーション能力が問われています。例えば、エンジニアの皆さんでしたら、原発や放射能の専門家で無くとも、放射能は黄砂のようなものと聞けば、何が危険か、どうすれば被爆を少なくできるか、だいたいの勘所がわかると思います。理系のエンジニア・科学者が、身のまわりの文系の人達に原発や放射能といったことをわかりやすく説明することで、放射能に対する不安を取り除いたり、「実はこういうケースが危ない」といった被爆を減らす冷静な行動への手助けもできる。科学的な見方を伝えることも、一つの社会への貢献、MOTを身につけて活かすことではないかと思います。

 エンジニアの皆さん、試しに普段やっている自分の仕事の内容を、ご家族に3分間で説明してみて下さい。世代が異なる両親や子ども、普段している仕事が全く違う配偶者に。技術オタク用語なしでうまく伝えられたでしょうか?

 基礎力のあるエンジニアがMOTを身につけ、世の人々のために活かすのは、実はそんなに難しいことではないのです。頑張ろう、理系!