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 家電メーカーなどのB2Cビジネス企業は、環境の変化により従来のビジネスモデルが機能しなくなったため、ビジネスモデルが合致する環境を求めて海外に進出しています。また新興国に合わせた製品の開発を重要視し、1,2年前からこの方向に向けて推し進めようとしています。

 パナソニックがインドのニーズに合わせて機能を省き価格を抑えたインド専用モデルのエアコンを販売し始めたのはそのよい例でしょう。Samsungなどの韓国企業が推し進めてきたローカルを重視する戦略を日本企業もやっとここに来て採用し始めました。

 今までの国内や先進国向けの製品をモディファイして新興国向けの製品とするのではなく、ようやく現地のニーズ・ウォンツに照準を合わせてきたのです。

 このようにビジネスにおける「カベ」を乗り越えるのはなかなか難しいものがあります。今までの方法の他に、自分たちが経験してきた以外の成功事例があってもそれをすぐに取り入れることができません。見えていてもすぐには動けないのです。

 大企業というのは、自社の成功体験が伝統となって幾重にも層になって取り巻いています。これが災いして、世の中の変化に対応しきれません。大きくなった草食恐竜が、尻尾を肉食竜にかじられても、その痛みが脳に達するまで何秒もの間気がつかないのと似ています。これは何も大企業に限ったことでは。ありません。組織が古くなると、即ち成功体験を積み重ねるとどの組織でも生じることなのです。

 企業は大きな船と同じで、舵を切るまでに時間がかかりますが、しかし、いったん方向性が定まり実際に舵を切ると、その対応スピードは社員の予想よりも大きいことが多々あります。今度はトップの定めた戦略に社員がついてこれなくなるのです。

 いろいろと問題がありますが、今まで述べた3つのカベを乗り越えるビジネスの仕組みの構築と修正は、これはこれで進めていくことはとても大切だと思います。やっと結果が出始めたところですし、これを推し進めないことにはグローバル市場で生き残ることはできないからです。

 しかし、これらの既知の問題とその対応以外にこれからの日本企業が他に採るべき方法はないのでしょうか。今までの戦略のモディファイや他国の企業の成功事例のように、顕在化したニーズ・ウォンツに照準を合わせるしかないのでしょうか。それとも恐竜の一部が鳥に進化したように企業は進化できるのでしょうか。

 次回の後編では、日本企業がこれまであまり意識してこなかった「認識のカベ」、「アイデアのカベ」を取り上げ、時代に向けての進化について述べていきます。単にハードやソフトといった単体の機能やそれを用いた製品に捉われず、これからの商品開発をどのように転換して新しい価値を生み出すのかに焦点を合わせて考えていきたいと思います。

生島大嗣(いくしま かずし)
アイキットソリューションズ代表
大手電機メーカーで映像機器、液晶表示装置などの研究開発、情報システムに関する企画や開発に取り組み、様々な経験を積んだ後、独立。「成長を目指す企業を応援する」を軸に、グローバル企業から中小・ベンチャー企業まで、成長意欲のある企業にイノベーティブな成長戦略を中心としたコンサルティングを行っている。多数のクライアント企業の新事業創出/新製品企画・開発等の指導やプロジェクトに関わる一方、公的機関等のアドバイザ、コーディネータ、大学講師等を歴任。MBA的な視点ではなく、工学出身の独自視点での分かりやすい言葉で気付きを促す指導に定評がある。経営・技術戦略に関するコンサルティングとともに、講演・セミナー等の講師としても活躍中。