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 これに対して、フォックスコンの郭台銘・董事長は6月8日、「ノートPCの受託製造からは絶対に撤退しない。仮に生き残ることのできる企業が2社しかなければ、そのうちの1社はフォックスコンだ」と強調。郭氏はまた、「当社は値下げを武器に受注を獲得しているわけではない」「当社は既に重要部品、パネル、タッチパネルをはじめ、ノートPCにかかわるあらゆる構成部品の生産能力を備えている。それなのになぜ、撤退する必要があるのか? 顧客からも『フォックスコンさん、やってくれ』と頼まれているというのに」とコメント。撤退を全面的に否定している。

 Compal自身も今年、ノートPCの出荷が伸び悩む見込みだ。先の会見で陳総経理は、2011年通年のノートPC出荷目標を当初の5500万台から4800万台へと下方修正している。その理由について陳氏は「タブレットPC台頭による衝撃とネットブック急落の影響が重なったため」としている。一方で業界筋は、「主要顧客の一つであるAcerの不振、中でもAcerがタブレットPC出荷目標を当初の500万~700万台から250万~300万台へと大幅に引き下げた影響を受ける」との見通しを示している。

 6月下旬、上海の繁華街の一つ・徐家匯にあるPCショップの集まるビルを訪れた。向かった先はAcerのショップ。AcerはCompalの主要顧客でもある。

上海有数の繁華街・徐家匯にあるパソコンビル。HP、Sony、ASUS、Lenovoなどあらゆるブランドメーカーのブースが並ぶ
上海有数の繁華街・徐家匯にあるパソコンビル。HP、Sony、ASUS、Lenovoなどあらゆるブランドメーカーのブースが並ぶ
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 カウンターには15台前後のPCが並んでいたが、ノートPCとネットブックのみ。店員からはしきりに、2499元(約3万1000円、1元=約12.5円)のネットブックを薦められた。「タブレットPCはないの?」と尋ねるとようやく、戸のついた棚から10インチ、32GBモデルの「ICONIA TAB A500」を取り出してきた。市場が、Compalが受託生産していると見ているモデルだ。価格は3699元(約4万6000円)でネットブックより高い。しかし店員は、やはりネットブックを勧める。「展示もしてないし、タブレットはやっぱり、iPadの方がいいのからなのかな?」と意地悪な質問をすると、曖昧に笑うだけで否定しない。ちなみに、iPad 2はWi-Fi の16GBモデルが3688元(約4万6000円)、32GBモデルが4488元(5万6000円)だ。

AcerのタブレットPC「ICONIA TAB A500」とネットブック。店員はなぜかしきりにネットブックを勧めた
AcerのタブレットPC「ICONIA TAB A500」とネットブック。店員はなぜかしきりにネットブックを勧めた
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 Compalの陳氏がフォックスコン撤退を言い出した裏には、フォックスコンがiPadの生産を独占することに対するやっかみの気持ちが多少はあるのかもしれない。

 いずれにせよ、EMS/ODM大手が、ノートPC以外の分野への取り組みを強化しているのは事実だ。一例を挙げればQuantaは、法人向けクラウドに注力し始めている。5年前から米マサチューセッツ工科大学(MIT)と提携して研究・開発(R&D)を続けてきたが、2011年に入って、ソーシャルネットワークサービス(SNS)大手のFacebookと検索大手のGoogleから、クラウドで運営するデータセンター用サーバーを相次いで受注している。同社が、2011年の営業収益を牽引する3本柱としてタブレットPC、クラウド用サーバー、超薄型ノートPC(AppleのMacbook Air)を挙げる一方、従来型のノートPCを除外していることが、EMS/ODM企業のノートPC離れを象徴している。