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 企業内で余っている設備があればベンチャー企業に使わせてあげる、ベンチャー企業から連絡があったら30分で良いから会ってあげる、顧客の紹介を頼まれたら紹介してあげる、といった大企業にとってはほとんどコストを掛けないサポートでも、ベンチャー企業にとってはものすごく助かることが多いのです。日本社会はベンチャーに冷たいとよく言われますが、新しいことに挑戦する人を助けようとする善意は、日本の中にしっかりあると私は信じています。

 一方、大企業も営利目的に運営されていますし、それぞれのエンジニアは忙しく、ボランティアでベンチャー企業を助けるのは難しいことも否定できません。大企業とベンチャー企業は持ちつ持たれつ、Win-Winの関係になれると私は考えています。大企業はベンチャー企業の様子を間近で見ることで、大企業が手を出しにくいようなリスクの高い新しい技術の動向を知ることができる。大企業にとって、ベンチャー企業は最先端の研究開発のアウトソーシング先、と考えることもできるでしょう。また、ベンチャー企業が狙う市場は、市場規模が小さすぎて大企業では採算がとりにくいニッチ市場が多く、ベンチャー企業と大企業が市場で競合することは稀です。しかし、ニッチ市場が将来的に成長する可能性もありますから、有望な新市場の動向を把握できるというのも、大企業にとってのメリットです。大企業のエンジニアがベンチャー企業に刺激を受けてより積極的になるといった、人的な影響もあるでしょう。

 ただし、大企業がベンチャー企業を支援するとしても、限られた時間の中で誰に対してもサポートするわけにはいきません。多くのベンチャー企業の中から、将来ビジネスで成功しそうな会社を見抜くことが必要になります。これは、シリコンバレーの投資家が、有望な投資先を見極めることと同じです。シリコンバレーにおいて、ベンチャー企業を見極める鍵は、「人」です。

 ベンチャー企業にとって、技術や市場、ビジネスプランが必要なのは言うまでもありませんが、技術や市場の変化は猛烈に速いですから、こういったものは時々刻々変わっていきます。結局、投資判断は「人」を見て決めることになるのです。このように、人の見極め方はシリコンバレーの投資家にとっても重要で、かつ難しい問題です。ビジネススクールの講義でも、「こうすればよい」といった、人を見抜くための決定打があるわけではありませんでした。

 ビジネススクールの講義などで、成功した投資家の方々と接していると、彼らがベンチャー企業の人を判断するおおよその判断基準は、「頭の回転が速いか」でも、「プレゼンが上手か」でもなく、「運が良いか」だと感じました。昔から日本でも、成功の秘訣は「運・鈍・根」と言われてきました。「運」が良く、適度に「鈍」感で愚直に、「根」気よくやり続ける人が成功するのだと。はやり言葉で言うと、運が良い人というのは、「持っている」人ですね。