PR

 幸運な人には過去に何らかの成功体験があります。技術開発やベンチャー企業は一人では成功できませんので、成功体験がある人はきっと良い人に囲まれていたから成功できたのでしょう。また、成功しそうな人の周囲には、いい人が集まってきます。高校・大学そしてプロ野球で活躍を続ける、北海道日本ハムファイターズの斎藤佑樹選手が

「何か持っていると言われつづけてきました。今日、何を持っているか確信しました。それは仲間です」

という通りですね。つまり、過去の実績と、その人と関係が深い「仲間」を見れば、その人が「持っているか」どうか、おおよその判断ができるのではないでしょうか。

 先ごろ、GENUSION(ジェニュージョン)という、半導体メモリを設計・販売する日本のベンチャー企業が、データの高速記憶や耐久性に優れた、B4フラッシュ・メモリという独自のメモリを月産100万個レベルで製品出荷するという報道がありました。ジェニュージョンは三菱電機でDINOR型フラッシュ・メモリという、独自規格の製品を開発したエンジニアのグループが8年ほど前に立ち上げたベンチャー企業です。1990年代には様々なフラッシュ・メモリの規格が乱立し、東芝のNAND型、インテルのNOR型、三菱電機のDINOR型、日立製作所のAND型が市場で凌ぎを削っていました。熾烈な規格競争の末、NAND型とNOR型が勝ち残り、三菱電機はフラッシュ・メモリの製造から撤退しました。半導体業界の勝ち負けは必ずしも技術だけでなく、工場への巨額な投資による物量の確保、ソフトウエアのサポート、顧客企業の囲い込みなど様々な要因で決まります。DINOR型の敗北は必ずしも技術面ではありませんでした。私は東芝でNAND型を開発していて、DINOR型は技術面では素晴らしく、三菱電機のDINOR型の開発チームは「敵ながらあっぱれ」と感心していました。

 三菱電機を飛び出してジェニュージョンを立ち上げたエンジニアの方々は私よりもかなり年配の方々が多いのですが、大変失礼ながら、「あの年ですごいな」と驚かされ続けています。ジェニュージョンの状況に関して私は半信半疑だったのですが、量産開始という報道を聞き、「持っている人は何歳になっても持っている」と改めて実感しました。

 報道によると、ジェニュージョンの製品の製造はロームが行うようです。半導体メモリというのは工場でのプロセスの最適化、作りこみが必要な製品ですので、ジェニュージョンの製品開発に対してロームは何らかの援助をしたのではないかと推測しています。その代わりに、ジェニュージョンの製品の売り上げが増えるほど、ロームの製造ラインが使用されてロームの売り上げも伸びるという、Win-Winの関係ができているのではないでしょうか。

 産業再生法に基づき設立された「官制投資ファンド」の産業革新機構が、1年ほど前にジェニュージョンに対して、26億円もの投資を行いました。巨額の投資を受けると、要求されるリターンも巨額になりますので、今後も幾多の困難があると思いますが、是非ジェニュージョンには成功してほしいと思っています。そして、こうした元気のあるベンチャー企業と大企業がWin-Winの関係を築き、お互いに利益を享受しながら日本全体が活性化していければと考えています。