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 こうした「第4の波」への変化を、技術の最前線にいるエンジニアの皆さんは開発の現場でヒシヒシと感じていらっしゃるでしょう。私が専門とするLSIの設計では、1990年代では回路やレイアウトの設計など設計作業の大半がエンジニアの手作業でおこなわれてきました。しかし、コンピュータの高速化やCAD技術の進化により、多くの設計作業がコンピュータにより自動化されました。また人手が必要な作業も中国やベトナムなどにアウトソーシングされてきています。職人芸が必要と言われるアナログ回路の設計でさえも、自動化が着々と進んでいると聞いています。エンジニアには新しい回路システムの発明や新しい市場の開拓など、より創造性を発揮することが求められています。

 では、どうすれば創造性を発揮できるのでしょうか。スタンフォード大学ビジネススクールに留学した時には、MBAプログラムの中で「Creativity in business」という講義がありました。学生がチームを編成し、芸術家のように何か新しいものを作るといった課題をこなしながら、自分の中にある創造性を見出していくという授業でした。しかし、講義の中で「さあ、世の中で当たり前となっている事を疑い、創造性を発揮して、新しいアイデアをだしなさい」というのは、私にとっては今一つしっくりきませんでした。

 というのも、私は200件を超える特許を書いてきましたが、発明のほとんどが、職場の机の上ではなく、通勤途上の電車の中、入浴中、あるいはデパートで妻の買い物を待っている時などに、突然ひらめいたものなのです。私の場合は職場のように緊張感がある場所で「さあ創造性を発揮しよう」と思っても全くアイデアが出てきません。むしろ、職場以外のリラックスした環境で、何となく課題の解決策を考えている中から、突然アイデアが閃くことがほとんどなのです。過密なスケジュールの中で必死に仕事をしていた時には、実はさほど発明ができていません。むしろ忙し過ぎるとどうも頭が煮詰まってきてアイデアが枯渇してしまいます。なかなか普段は目先の仕事に忙殺されて時間が取れないのですが、アイデアが枯渇すると美術館に行くなど、できるだけリラックスした環境で創造的なものに触れることを心がけています。

 創造性を発揮する方法は人によって違うでしょうが、あえて一般化してみると、時間的な制約が厳しくなく、精神的にも遊びの部分があるリラックスした環境で創造性が発揮されるのではないでしょうか。古代ギリシアのアルキメデスは入浴中に、王冠を水に浸すことで、王冠を壊さずにそれが純金であるかを調べる方法を発見したという言い伝えがあります。また、リンゴの木からリンゴが落ちるところを見てニュートンは万有引力の法則を思いついたと言われています。

 最近の例では、シリコンバレーの代表的な企業であるGoogleでは、勤務時間の20%は好きなことをして良いという「20%ルール」があります。また、Googleの社内のフロアはちょっとした遊園地と言えるような、アトラクションやインテリアがあるそうです。リラックスした環境で20%ルールで許された自由な時間を使って、GoogleニュースやGmailといった、現在のGoogleの主力となった商品が作られていったと言われています。

 私にとっても研究室で研究員や学生に創造性をいかに発揮してもらうかが重要な課題です。試行錯誤を繰り返していますが、お掃除ロボット「ルンバ」(Tech-On!の関連記事1)を使ったり、この夏には節電のために、ダイソンの「羽根のない扇風機」(Tech-On!の関連記事2)を購入したりしています。こうした創造性あふれる物に触れることで、何かを感じてくれたらと思っています。