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 仕事に遊びを持たせる、遊びの中で仕事を考えるというのは、遊びの中でも仕事を忘れない、ということでもあります。公私の別を明確にして、プライベートな時間には仕事を完全に忘れる、というのではふとアイデアを思いつくことは難しい。いつも仕事を忘れないのが大事という「コンセプトの時代」は、非常に厳しい時代とも言えます。

 どんな人でも嫌いなことを24時間、ずっと頭の片隅に置いておくことはつらいですし、嫌いなことを考えていたら、そもそもリラックスなんてできないですよね。創造性を発揮するためには、好きなことを仕事にする、あるいは、仕事の中で好きな部分を見つけるということが、今までにも増して重要になってきたと思います。

 ここまで読んで、「創造性なんて、ちょっと自分には・・・余裕がないなぁ」と思われた方。先ほどのスタンフォード大学の講義で強調されていたのは、創造性は誰もが持っているもの。良い例は、人口はたった2000人の過疎化と高齢化が進む徳島県上勝町での、もみじの葉っぱを使ったビジネスを進める「いろどり」。「いろどり」は、平均年齢70歳のおばあちゃんたちが山で取ってきたもみじの葉っぱを、料理の「つまもの」として高級料亭に出荷し、年間2億5000万円を売り上げているそうです。

 このビジネスを思いついた「いろどり」社長の横石知二さんは、料亭で食事をした際に、近くのテーブルの若い女性が、料理に添えられた青もみじの葉っぱを手にとり、これかわいいと、ハンカチに包んでもって帰ろうとしたことから、葉っぱのビジネスを思いついたそうです。葉っぱは軽いですから、高齢なおばあちゃんたちが作業するにはうってつけの素材だったわけです。

 エンジニアの皆さんでしたら、普段の仕事での作る側ではなく、ユーザーになってみるというのも良いでしょう。自分の携わっている技術が世の中で、どう受け止められているのか、技術から少し離れた普通の人の視点で見るのです。例えば、電気屋さんに行って、先入観の無い家族に商品を選んでもらったり、自社製品について客のふりをして店員さんに聞いてみたり。「いろどり」の例のように、身近な製品が実は思わぬ使われ方がある、という発見があるかもしれません。

 また、アイデアを創造する時には、一人で悶々とするのではなく、みんなで考えるのも良いでしょう。荒唐無稽に見えるアイデアでも、とりあえず口に出してみて、周囲の人とブラッシュアップする。あるいは、専門家に「こういうアイデアを思いついたんだけど、この部分はわからないので教えてくれませんか」と聞く。前向きな提案をする人というのは少ないものなので、意外と専門家も親切に教えてくれるものです。先ほど紹介したスタンフォード大学の講義のミソは、「チームを組んで」創造的なものを作ることなのです。一人では考えが行き詰ってしまう場合でも、三人寄れば文殊の知恵ということですね。

 もうすぐ夏休みがやってきます。リラックスした環境の中で、何となく仕事について思いをはせ、街に出てみる。普段会わない人に会ってみる。そして、何か新しいアイデアを考えてみる。そのアイデアを友人や家族と議論してみる。ブラッシュアップして仕事として具体化してみる。到来しつつある厳しい「コンセプトの時代」。個人としても、日本としても生き抜くためには、アウトソーシングされつつある土俵で闘い続けるのではなく、こうしたアイデアの創造・集積を切り札に、抜きんでることではないでしょうか。