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 以前のコラム「なでしこジャパンに学ぶ共感力」では、なでしこジャパンの佐々木則夫監督を紹介しました。佐々木監督の選手の気持ちを思いやる共感力というのは、高いEQの良い例でしょう。

 こうした、孔子の「論語」で書かれているような、日本人にとっては当たり前のような倫理観や価値観の重要さが、弱肉強食の欧米のビジネス社会でも再認識されているのです。

 人間の感情を理解するEQ。人の感情は言葉以外のしぐさで表現されることが多いのです。他人の気持ちを感じ取るカギは、表情、声のトーン、身ぶりや手ぶりなどの言葉以外の要素です。人の本当の気持ちは、「言った内容」ではなく、「どのように言うか」に現れるのです。

 「人は見た目が9割」という本が日本でもベストセラーになりました。人の本音の9割以上が、言葉以外の手段によって伝えられると言われています。電子メールやツイッターなどによるコミュニケーションは、単純な情報の伝達には便利です。

 しかし、言葉で伝わる情報は言いたいことの、ごく一部。電子メールに頼り過ぎては、意思疎通を図って信頼関係を構築することは難しいでしょう。

 電子メールが普及してからは、複雑な案件を相談するために、とても長いメールを書いてくる人や、職場で近くに居るのに、わざわざメールで込み入った説明をする人が増えてきました。多くの場合、そのようなメールは読まれなかったり、読まれても思いを正確に伝えることは難しいのではないでしょうか。

 外資系の金融機関や経営コンサルティング会社では、今でも連絡は直接会って相談するか、ボイスメールが一般的だそうです。日本だけでなく欧米でも、人との信頼関係を築くには、直接会い、議論をたたかわせたり、仕事で一緒に汗をかくといったことが必要なのです。

 話を民主党代表選挙に戻しましょう。野田氏は、早期の解散総選挙を恐れる議員たちに対して、

「このルックスなので、首相になっても支持率は上がらない。だからすぐに衆院解散はしない」

と笑いを誘いながら、議員たちに安心感を与えました。そして、

「ドジョウが金魚のまねをしても仕方がない。ドジョウらしく泥くさく国民のための政治を前進させる」

と、地道に政策を推進することを訴えました。

 「宇宙人」を自称した鳩山由紀夫元首相や、自身を高杉晋作になぞらえて、「奇兵隊政権」と言った菅直人前首相。キャッチフレーズばかりで行動が伴わない内閣が続いた後ですので、野田氏は自分の地味な容姿を逆手に取って、上手なアピールをしたと思います。

 「ドジョウが住みよい泥になる」と宣言した平野博文国会対策委員長や、ドラえもんに似た藤村修官房長官などの脇役陣もうまく立ち回っているように見えます。内閣支持率が前内閣の15%から60%へとV字回復したことからも、野田氏の党や国民に対する感情マネージメントは、上々の滑り出しと言えるでしょう。

 こうした「何をばかなことをやっているんだ」と呆れ果ててしまう政治ドラマの中にも、私たちエンジニアが職場や家庭で参考になる、感情マネージメントの題材が溢れているのではないでしょうか。エンジニアがEQを高めることで、自分の技術や才能を最大限に発揮する。

 逆に、政治家の方々は、地道な努力に裏付けられた、世界トップレベルの技術力を持つ日本のエンジニアをお手本にしてはどうでしょうか。政治家の皆さんには、エンジニアの姿勢を見習って、もっと経済・社会問題や政策を勉強して、政策を推進して欲しいものです。