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(4)視点力への道

 視点力を身に付けるためには、常に視点という考え方を意識し、「視点リスト」のようなものを頭の中に持って活用することです。そして、例えばTPOに応じて必要な視点を取り出し、使いこなせる訓練を積むことです。

 視点リストですが、これは分野ごとに違いがあります。視座とも関わるのですが、私が在職中、卒業研究のゼミナールで「システムに関する視点」をグループ作業として、専門の書物から抜き出したことがあります。細かいものまで入れると、約2000~3000ありました。そして、分野によって、視点がいろいろと変わることが分かったのです。

(5)視点拡大と視点集中

 視点を意識しながら物事を認知する場合、ある段階では「視点拡大」という拡散的思考(視野を広げる思考)をする場合があります。これは、より多くのものに着眼し、視野を広げたり、奥行きを深めたり、幅広い連想をしたり、想像したりする段階での視点の在り方を言っています。もちろん、「視点収束(フォーカシング)」という集中的思考をする場合もあります。

 このような場合、二つの対立する視点、あるいは並立する視点をセットで取り入れることを考えたりします。例えば「縦と横」「微視と巨視」「有機と無機」「微分と積分」「文系と理系」「作用と反作用」「前提と帰結」「安全と危険」「男性と女性」「動物と植物」「海と山」「父性と母性」「上位と下位」「右と左」「保守と革新」「過去と未来」「攻撃と防御」「加熱と冷却」「上手と下手」など、たくさんの視点の対があります。

 三つの視点のセット、すなわち鼎立する視点のセットもあります。例えば「知情意」「衣食住」「縦横高さ」「過去と現在と未来」「動物と植物と鉱物」「保守と中道と革新」「産業界と学界と官界」「低速と中速と高速」「PDS(計画と実行と反省)」「目標、現状、手段」「TPO(時と場所と状況)」「プラスとゼロとマイナス」「過剰と均衡と不足」「敵と味方と石ころ(中立や第三者)」など、これもたくさんの視点のセットがあります。

 四つのセットの場合も、五つのセットの場合も、六つのセットの場合もあります。四つのセットでは「起承転結」「上下左右」「小中高大」「喜怒哀楽」などがあり、五つのセットでは「4M1I=マン、マシーン、マネー、マーケット、インフォーメーション」「五感または五官」などがあり、六つのセットでは「5W1H」「5M1I」「衣食住+医教楽」などがあります。

 このような視点や視点のセットを用いて、視野や関心事の範囲を広げたりしますが、一方、視点集中する場合もあります。それは集中的思考(ターゲットを絞る思考)をすることです。価値判断から不要と判定した視点を捨て、思考の範囲を絞るのです。

(6)視点結合とは

 視点は単独のものもありますが、二つ、三つと合成(結合)することもあります。視野と範囲を結合すると、「視野範囲」という語になります。意味と範囲を結合すると、「意味範囲」となります。

 このように、私たちが普段使っている漢字は、実に結合性に富んだ言葉なのです。もちろん、英語にもあります。パラダイムとシフトを結合して、パラダイム・シフトと言います。最近、よく使われる言葉の一つですね。グローバルとスタンダードが結合して、グローバル・スタンダードという言葉は、常識語になっています。

  二つの単語を一つの単語に結合する場合もあります。プロデューサー(生産者)とコンシューマー(消費者)を結び付けた「プロシューマー(生産者兼消費者)」がはやったのは、「第三の波」という本からでした。今、グローバル(世界的)とローカル(地域的)を結合して、グローカルという言葉も聞かれます。すべて視点なのです。

(7)視点力を生かす

 視点力は、仕事場で常時活用します。BS(ブレーン・ストーミング)も、いろいろな視点からの発想術です。チェック・リストも言わば視点集です。私の研究室では、報告のための「クメヒロシ」というチェック・リストを使っていました。

 説明しますと、「ク」は「口で報告する」、「メ」は「メモやメールで報告する」、「ヒ」は「日」で、「日誌で報告する」、「ロ」は「録音して(電子媒体で)報告する」、「シ」は「書類で報告する」といったようなことです。

 漏れや落ちのある視点を基にしては、満足な仕事ができません。抜けがあるアイデアは、使い物になりません。考えられる限り、多面的に視点を思い浮かべ、その視点を利用してチェックする力を身に付けたいものです。

 視点力も、仕事の場で有効に働きます。仕事に必要な視点を出したり、漏れや落ちをチェックしたり、新しい視点を思い付き、発想や連想や創造のきっかけになる基礎力であるからです。