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 DRAMの製造メーカーとして日本で唯一生き残ったエルピーダメモリが、国内の主力工場である広島工場の生産能力の4割を、台湾の生産子会社である瑞晶電子(Rexchip Electronics社)へ今後1年をかけて移転するという報道がありました。製造装置の移転により、日本と台湾での生産比率は、従来の6対4から3対7へと逆転するそうです。

 半導体の工場では、製造装置がクリーンルームという埃や塵を極限まで減らした巨大な部屋に置かれています。また、製造装置はナノメートル単位の微細な加工を行うために、極めて高い精度で作られている、とても複雑な精密機械です。そんな取扱いに細心の注意を要する半導体の製造装置を、広島からわざわざ台湾に持っていくには、相当の移転コスト、時間、労力を必要とするでしょう。また、移転が精密機械である装置に悪い影響を与えるリスクもあると思います。

 本題からは外れますが、日本から台湾への半導体の製造装置の移転が可能なのは、日本の極めて有能な引っ越し業界のおかげではないでしょうか。これは外国で引っ越しをしたことがある方なら、身にしみて感じていらっしゃるのではないでしょうか。

 日本の引っ越し業界については別の機会に論じましょう。膨大な労力をかけ、大きなリスクを冒してまで日本から台湾に製造装置を移転するからには、エルピーダメモリの決定には、

「もう二度と日本には製造を戻さない」

という片道切符、不退転の決意を感じます。

 製造能力が減らされ、クリーンルーム内に空き地ができてしまう広島工場では、スマートフォンなどのモバイル機器に搭載する、低消費電力型のDRAM、つまり高付加価値でより高い価格で売れるDRAMを製造するとのことです。円高だけでなく、高い法人税、電力供給の不安、TPP加入問題などを考えると、日本で製造を続けるには、環境が厳しすぎるのかもしれません。コモディティー製品の製造は海外の工場に移転し、国内の工場では高付加価値品だけ製造するというのも、仕方のないことだと思います。

 日本で製造を続けることがもちろんベストではあります。しかし、現在の日本の状況では、日本で製造を続けたくても、コストなどの面で、グローバル競争で競合している韓国などの企業にどうしても太刀打ちできないケースも出てくると思います。そうした場合には、海外に製造を移転してでも、コモディティー製品の製造から逃げない、というエルピーダメモリの決断は、前向きな経営判断だと、積極的に評価できると思います。