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 一方、DRAMと同様に市況が悪化し、グローバル市場で厳しい価格競争を強いられている液晶パネル業界はどうでしょうか。かつては、日本で数多くの企業がテレビやパソコン向けの液晶パネルの製造を行っていました。最近は市況の悪化や世界市場でのシェアの減少に伴い、事業の撤退が相次ぎました。液晶パネル技術を黎明期から引っ張ってきたシャープでさえも、市況の悪化と悪化する国内の環境に耐えかねて、パネル事業の軸足を従来のテレビやパソコン向けから、より成長が見込めるスマートフォンやタブレット端末向け、60型以上の大型液晶パネル事業などに移す、と報道されています。

 確かにテレビやパソコン向けの液晶パネル事業は異常とも言える事業環境で、勝者なき消耗戦の値下げ競争に陥っています。その結果、低コスト技術を持ち、ウォン安など日本よりは有利な事業環境にある、世界市場シェア1位の韓国Samsung Electronics社でさえも赤字のようです。収益の上がらないテレビやパソコン向け液晶パネル事業の代わりに、付加価値の高いスマートフォン向けの中小型液晶パネルや大きなサイズのパネルに経営資源を集中する、というシャープの戦略は、一見正しいように見えます。

 コモディティー市場で供給過剰に陥り、異常にも見える安値競争が行われると、体力の無い会社から脱落していくことになります。そして、いくつかの企業が市場から撤退することで、供給過剰は解消され、価格も安定していきます。最後まで市場に生き残った数社が市場を独占し、残存者利益を享受することになります。

 厳しいコスト競争力が必要とされるコモディティー製品の市場に踏みとどまるべきか。それとも、コモディティー市場からは撤退し、競合他社が真似しにくい高付加価値の製品の市場に移るべきか。ハーバード大学 経営大学院 教授のクレイトン・クリステンセンが著書「イノベーションのジレンマ 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」の中で、

「顧客の意見に熱心に耳を傾け、新技術への投資を積極的に行い、常に高品質の製品やサービスを提供している業界トップの優良企業が、その優れた経営のために失敗を招き、トップの地位を失ってしまう」

と述べ、「イノベーションのジレンマ」と名付けています。

 コスト競争が激しく、付加価値の低いコモディティー製品から撤退し、より高品質・高性能で高い付加価値を持つ製品に経営資源を集中する、というのは合理的な経営判断に思えます。しかし、コスト競争力に秀でたコモディティー製品が、やがては技術革新・「破壊的イノベーション」により品質を向上させ、高付加価値品の市場を侵略してくる。その結果、以前は高付加価値とされていた市場が、コモディティー化してしまう。

 こうした技術革新とコモディティー化を繰り返した結果、かつての優良企業は、より高付加価値な市場へと逃げ続けることを余儀なくされる。そして、最後には、かつての優良企業は高付加価値でもニッチな市場へと追いやられる。