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図1●完全人工光型の植物工場の例 (写真:テクノアソシエーツ)
図1●完全人工光型の植物工場の例 (写真:テクノアソシエーツ)

 「植物工場」の注目度が急速に上がっている(図1)。背景にあるのは、東日本大震災に伴う津波による田畑の塩害や、福島第1原子力発電所の事故で漏洩した放射性物質による土壌汚染である。これらの問題はいずれも深刻で、東北地方の農業や畜産業が受ける影響の大きさは計り知れない規模になりつつある。

 生産者側は、安心して農業を続けられる仕組みを切望していて、一方で消費者もこれまで以上に「食の安全」に注目している。こうした状況の急変に対応できる策として、浮上したのが植物工場である。東北地方の復興でスマートシティを建設しようとの計画が今、多くの自治体によって進められているが、その中に植物工場の建設・運営を組み入れ、農業の再生を目指そうという例が増えているのだ。

塩害や土壌汚染などの課題を解決

図2●エスペックが「INTER-FOOD JAPAN 2011」に出展した植物工場の模型 (写真:テクノアソシエーツ)
図2●エスペックが「INTER-FOOD JAPAN 2011」に出展した植物工場の模型 (写真:テクノアソシエーツ)

 植物工場は野菜工場とも呼ばれ、文字通り農作物などの植物を工場の中で生産する技術である(図2)。一般の農業では自然に存在する環境を、植物工場では人工的に作り出す。大手食品メーカーなどが実用化や導入を進めつつある。

 植物工場は、2種類に大別できる。光合成に必要な光として、部分的に太陽光を利用する太陽光併用型と、すべてをLED(発光ダイオード)などの人工的な光源でまかなう完全人工光型である。植物に水分や養分を与える方法としては、水耕栽培を採用するものが多いが、土耕栽培も可能である。

 これまでは、植物工場の利点として「場所さえ確保できれば大都市でも地下でも農作物を生産できる」という部分が強調されてきた。しかし今は、津波による塩害で当面使えなくなってしまった田畑でも、そこに植物工場を建てれば農作物を生産できることが注目されている。さらに放射性物質の降下によって土壌汚染の被害を受けた農地でも、植物工場なら放射性物質を心配することなく野菜を生産できる。つまり、植物工場は細菌や農薬だけでなく放射性物質もない安全な「三無い野菜」を供給できる解決策になる。

 植物工場内のメリットは他にもある。まず、栽培棚を多段にすることで収穫量を平面栽培の4~5倍に増やせる。さらに、野菜の生育に最適な温度に室温を維持することで数十日単位で収穫が可能なため、季節や天候に左右されず年間を通じて発芽から収穫までのサイクルを繰り返す多期作が実現できる。このようにして農作物を植物工場で生産することにより、雇用も生まれる。基本的には自動化が進んでいるため、雇用吸収力はそれほど大きくはないが、大震災で失われた多くの雇用を回復させる手段の一つにはなる。