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 「Don't be evil.(邪悪になるな)」。ご存じのように、このフレーズは米Google社の社是の一つです。しかし、10月3日号の特集「まだAndroidでいきますか」の取材を通じ、そのGoogle社の経営陣はかなり“Evil”な人たちなのではないかと、感じる瞬間がありました。

 そう感じた象徴的な事例がGoogle社が、Android搭載スマートフォン/タブレット端末を開発するメーカー(以下、端末メーカー)に結ばせている「Anti Fragmentation Agreement(AFA)」なる契約です。Androidプラットフォームのフラグメンテーション(断片化)を防止するという名目で作られた契約で、Google社が定義するスマートフォンやタブレット端末から外れた端末を作らないと約束させるものです。AFAを結んでしまうと、Google社が定義する機器とは違うものを作ることができなくなります。例えば、Android搭載のカーナビや医療器具などを作ったとすると、これがAFA違反だとなる可能性があります。

 AFAを締結した端末メーカーは、その見返りとしてGoogle社から優先的に最新のAndroidのソースコードを受け取れます。Androidの最新版が搭載出来るかどうかは「スマートフォンやタブレット端末の販売にとって死活問題」(ある端末メーカーの担当者)であることから、端末メーカーとしてはAFAを結ばざるを得なくなっています。

 しかしながら、このようにGoogle社が端末仕様を定義し、“機器メーカーの自由を縛る”のが、悪いとは思いません。多数の機器メーカーが好き勝手に機器を作ってしまうと、メーカーや機種ごとにアプリケーション・ソフトウエアが動かないといった問題が発生するからです。誰かがガイドラインを作り、機器メーカーに遵守させる必要があります。メーカーにとっても、これを遵守することで、Androidが利用者に受け入れられ、結果として機器が売れるという好循環を得ることができます。Androidの場合、この立場にプラットフォーム・ベンダーであるGoogle社が立つのは当然と言えます。「これに従うのが嫌なら、他のプラットフォームを使えばいい」(あるAndroid技術者)わけです。

 それでも、Evilだなあと感じるのは、Google社のやり方です。まず最初に「オープンで自由だから」と言ってメーカーを引き寄せ、「フラグメンテーションが起こるから」と言って“無邪気に”端末メーカーを縛り始める。AFAで縛られたメーカーは、他社に先駆けて新しいカテゴリの製品をAndroidを使って作ろうと考えたら、あらかじめ、その製品についてGoogle社に相談する必要が出てきます。つまり、Google社には各社の戦略に関する情報がどんどん入ってくるわけです。一見、Google社がAndroid提供開始時にこうしたことを予期しておらず、その後、フラグメンテーションが起こってしまったために、やむなくAFAを結ばせることにしたという形に見えますが、用意周到に考えられた戦略のようにも思われます。もちろん、本当にGoogle社の考えが、そこまで及んでいなくて、成り行きでAFAを持ち出してきたというのが真実かもしれません。

 でも、頭のいいGoogle社の経営陣が、そうした自体を想定していなかったとは考えられないのです。フラグメンテーションの可能性については、Android搭載スマートフォンが登場する前から、さまざまな人が指摘してきたのですから。

 このように考えていると、最近発表された米Motorola Mobility社の買収にも裏があるように思えてなりません。現時点では「Motorola Mobility社は特許訴訟防衛のために買収したのであって、他の端末メーカーに影響はない」と言っていますが、いつか変節するのではないかと疑ってしまいます。とりあえず、Androidを採用した機器を作っているメーカーはいつでも、Google社に“はしご”を外された場合のことを考えておかねばならないと思います。