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(3)本の読み方から

 写真から入りましたが、本についても視点があります。まず、初級的読み方、中級的読み方、上級的読み方を意識させるためにも、視点(視座もあるが)に注目してもらうことにしています。

 初級的読み方の段階では、文章をできる限り忠実に読み、忠実に解釈します。文意を把握することが主眼になります。できたら、感想文ではなく、読後感というべきものを文章にしたいものですね。ここにもいくつかの視点が出て来ました。「文章」「忠実さ」「解釈」「文意の把握」「文の主眼」…です。

 中級的読み方の段階では、分からない用語、分からない故事来歴、分からない言い回しなどは、できる限り他の文献を当たるように薦めます。1冊の本を読む場合、関連の深い数冊の本を参照します。そして、自分の経験や意見などを意識しながら、ある場合は批判的に、ある場合は同調的に、ある場合は飛躍的に読むことです。ここでの視点は、読者にお任せしましょう。

 上級的読み方の段階では、例えば著者の意図を推測したり、著者が置かれている立場(視座)を推測したり、登場人物の視座や視点を推測したりします。できれば、著者が表現した内容以上に創造的に読みたいものです。こうした読書でも、やはり視点が重要な働きをします。

 では、職場や出先ではどうでしょうか。その場その場で、視点を意識したらメモします。もし自分が所持していない視点を感じたら、文献やデータで補強する、所有している知識でもって類推する、他の視点と組み合わせて統合するなど、何らかの工夫をしなければなりません。時には、自分で視点を作り出さなければならないことさえあるはずです。できたら造語してもいいのです。こういう頭の中での整理や発想といった活動が、視点力を高めるのです。

(4)視点リストと視点図

 視点について「何でもいいから出しなさい」と言っても、訓練なしでは出て来るものではありません。まずターゲットや狙い、あるいは限定したものがないとなかなか出ません。受講生たちには「自動販売機(自販機)」や「コンビニ」、「小売店」など、よく目にするものを選んで伝えました。

 最初の例で言えば、「自販機」の視点では、販売商品、販売価格、品質、在庫量、購入者、利用者、販売者、管理者、希望商品、新商品、売れ筋情報、情報収集、法的制限、音、光、電力消費量、設置場所、ごみと収集、迷惑行為、無駄、環境保全、必要性、サービス、品揃え、価格帯、立地、利益、投資額、仕入先、自販機メーカー、ルートサービス、メンテナンスと、多数にのぼりました。

 「コンビニ」や「店」も同じような視点が挙がります。もちろん、異なった視点も挙がります。同じような視点は「共通視点」や「類似視点」と、名付けました。異なった視点は「特異視点」「異質視点」「固有視点」と、名付けました。こうして視点はどんどん増え、視点の考え方が広がり、結果として「視点リスト」のようなものが出来上がっていきました。

 時には「市場(しじょう)」「占有率」「商圏(トレーディング・エリア)」など、ちょっと考えさせるテーマを選んだこともありました。また、カタカナ言葉にも注目させ、「システム」「エンジニアリング」「アイデンティティ」など、抽象的なものを与えたりしたこともありました。

 これらの視点を図に示したものが、私たちが命名した「視点図」です。視点を出したり、出した視点で事象を考えたり、場合によっては発想したりする時、視点図は結構利用できます。こうした視点リストを作成したり、視点図を描いたり、活用したりすることで、着実に視点力が高まります。

 これは私の工夫ですが、問題解決に用いる視点リストや視点図を、職場のパソコンに入れておいてブレーンストーミングなどに用いることもしました。私は、そのような仕組みを「CAPSS(Computer Assisted Problem Solving System)」と名付けて、教育訓練や問題解決に活用したこともあります。もちろん、新しく気付いた視点は、その場でシステムに入力し、事後の活用に供します。