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 日本人の読者が見ると一瞬「三歩進んで二歩下がる」と昭和40年代にヒットした流行歌の歌詞が頭の中に浮かぶかもしれないが、そうではない。「二」は第二次産業、「三」は第三次産業のことを指す。「第二次産業から退却して第三次産業に進め」、すなわち「工業からサービス業へ産業を転換せよ」という意味だ。

 中国の検索最大手「Baidu(百度)」が運営する中国版ウィキペディアの「百度百科」によると、「退二進三」の言葉は、国有企業の整理・淘汰が進められていた1990年代に生まれた言葉。市場がなく経営不振に陥っていた中小規模の国有工業企業をサービス産業に転換させるという試みがなされた際に登場したスローガンだ。

 この言葉が近年、新たな意味を追加して再浮上している。

 中国各地の大都市では1990年代以降、道路整備を進める上で、都心部を二重、三重に取り囲む環状線を盛んに作ってきた。首都の北京はこの典型で、明代の城壁跡に沿って敷設した全長32キロメートルの第二環状線をはじめ、現在では5本の環状線が町を包囲している。

 こうした中、都市化の進行で都心部に近い第二環状線の内側は地価がうなぎ登りに上がっている。そこで各地の当局は、第二環状線付近にある工場を、郊外の第三環状線の外側まで移転させ、広大な工場跡地に住宅や商業施設を造成するということを進めつつある。すなわち、「退二進三」には第二、三次産業という意味のほかに、環状線の内側と外側という意味が加わったというわけだ。

 今回、Catcherの問題が浮上した蘇州でも、旧市街の西部に広がる「Suzhou National New & Hi-Tech Industrial Development Zone」(蘇州高新区)の商業・貿易エリアである獅山エリアでこの「退二進三」プロジェクトが進められている。先の『今周刊』によると、液晶テレビの受託生産で世界最大手の台湾TPV Technology社が、「退二進三」プロジェクトに従って獅山エリアから生産拠点の撤退を決定。これに反対したTPVのライン従業員ら300人あまりが10月20日、同社前に集まり職の確保と撤退反対を訴えたとしている。

 一方で、先の工商時報は、「中国の庶民の間で、環境問題や労働者の権利に対する意識が向上しているのは事実であり、Catcherの一件は、中国に製造拠点を構える台湾系の受託生産業者にとって、極めて大きな警告になったのは間違いない」と指摘。今後、同様の問題が突発的に発生した場合、どう対処していくかはEMS/ODMの大きな課題だとしている。