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 環境問題を理由に米Apple社のサプライチェーンであるアルミ・マグネシウムダイカストのノートPCボディメーカー、台湾Catcher Technology社が、江蘇省蘇州市の工場で10月中旬、操業停止に追い込まれたということは前回、このコラムでお伝えした。Appleのサプライチェーンが中国の製造拠点で周辺環境を汚染しているという中国の環境団体による指摘を、中国の国営テレビ局、中国中央電視台(CCTV)の人気時事番組が取り上げた後、中国のネットやメディアには「毒蘋果」、すなわち「毒リンゴ」という表現が瞬く間に拡大した。問題を取り上げたのが中国共産党中央の背景を持つCCTVだったことから、Appleが中国の環境や市民の健康を犠牲にして、iPhoneやiPadで巨額の利益を挙げていると攻撃することを、当局も容認した証ではないかとの見方が、Appleのサプライチェーンを多く抱える台湾で広がった。

 その騒動も冷めやらぬ10月31日、台湾系メディア『工商時報』が気になる記事を配信した。

 当社のウェブサイト閲覧には会員登録が必要2週間無料で読める試用会員も用意)でも、「中国当局、自国携帯ブランド保護で『サムスン冷遇』を3大キャリアに指示?」として報じたのだが、 中国当局が、国内3大キャリアであるChina Mobile(中国移動)社、China Telecom(中国電信)社、China Unicom(中国聯通)社に対し、中国系ブランドメーカーが出すAndroidスマートフォンを積極的に調達したり、ユーザーに対する購入補助金を増額するよう指示。一方でSamsungのAndroidスマホについては、購入補助金を積極的に出さないよう求めた、というもの。工商時報の伝えた業界筋は、「中国当局は、Huawei(華為)社など中国系3社に匹敵するシェアを単独で獲得しているSamsungに、『物申したいことがある』ようだ」としている。

 自国の企業よりも商売が順調だからといって、当局が外資系のいち民間企業に対し「物申したいことがある」とは、にわかには信じがたい話。ただ、「毒リンゴ」騒動から間を置かずにこういう話が出てくると、さもありなんと思ってしまうのも事実だ。

タイトル
Samsungの5.3型AMOLED搭載Androidスマホ「GALAXY Note」の巨大広告。日本ではまだ未発売だが、中国では11月10日から発売された。実勢価格は5999元(約7万3800円)

 実際、Samsungのスマホは、中国市場においてAppleのiPhoneと並び、圧倒的な強さを誇っている。中国の民間調査会社、IIMEDIA Research社のが9月7日に発表した統計によると、2011年上半期の中国市場におけるAndroidスマートフォン市場のメーカー別シェアで、Samsungは24.2%を獲得し首位に立っている。中国系ではHuawei11.4%、ZTE(中興)社9.8%、宇龍通信社のブランドCoolpad(酷派)9.2%と3~5位を独占した。ちなみに2位にはMotorola Mobility社が11.8%で入っている。

 これら中国の3大キャリアは昨年来、価格を1000元(1元=約12.3円)に抑えた「千元スマホ」を、中国系ブランドメーカーと提携して積極的に推進している。先の工商時報の報道は、3大キャリアの購入補助プランに組み込まれたHuawei、ZTE、Coolpad、Lenovo(聯想)社のスマートフォン販売量が右肩上がりで急増。千元スマホの販売量が2カ月で100万台に達したとしている。中国の業界筋によると、中国3大キャリアの第3世代移動通信(3G)端末に対する購入補助金予算は、China Mobileが175億元、China Telecomが121億元、China Unicomは11年1~9月期の実績で41億5000万元だったという。

 11月上旬のある日、上海の筆者の自宅近くにあるChina Unicom社の店舗を訪ねてみた。「千元スマホを見せてくれ」と伝えると、店員が出してきたのは5機種。ZTE、Lenovo、Coolpad、Huawei、Amoi(夏新)社といずれも中国系ブランドで、価格はZTEが999元、他の4機種はすべて959元だった。Androidのバージョンは2.2~2.3。毎月96元の料金プランに入ると、スマホ本体に相当する通話料1152元を24カ月に分割して返還してくれるというプランが用意されていた。

「Samsungはあまりお勧めじゃないの?」と誘導尋問じみた聞き方をすると、「そんなことはないが、Samsungの1000元台モデルはOSがAndroidではなく自主開発のBADAなので。この価格帯なら中国系のAndroidスマホを買うお客さんが圧倒的に多い。Samsungを買う人は、4000元台のハイエンド機種を選ぶケースがほとんど」とのことだった。