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宮田 リスクを取らないから経営者も育たないし、部下にリスクを取らせないから次の世代の経営者も育たない。人間は難しいことを引き受けてやっていると、だんだん力が付きます。若いうちから責任とリスクを取る経験をさせなければならないのです。

加藤 若い人への権限委譲が大切だと。

宮田 小さい規模でもいいから、とにかく経験させて、成功体験を積み重ねていく。それしかありません。失敗体験では、人間は成長しません。失敗を続けると、考え方がどんどん後ろ向きになる。結局、誰もリスクを取らずに、社長ですら責任もリスクも取らないという状態ですよね。

 少し技術的なチャレンジが必要な製品と、既存の技術で100%安全に作れる製品を選ぶ時に、リスクがないから後者にしようと社長が決断を下すような例が多い。私も目の前でそういう決断を下すのを目にしたことがあります。リスクを乗り越えて開発することで、技術力は伸びていくんじゃないですか。経営者は、それを知らないんじゃないかと思えるほどです。経営者が自ら責任とリスクを取って、部下にも取らせる。これが基本です。もちろん、熟慮した上でリスクを取るわけですが。日本は、明治維新や戦後でもリスクをとって成長してきたわけでしょう。

加藤氏
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加藤 リスクを取れなくなったのは、なぜでしょうか。

宮田 米国企業がリスクを取れるのは、簡単に言えば、もうかっているからでしょう。体力がなければリスクは取れない。経営者は、利益のある経営をする必要がある。でも、日本メーカーは逆ですよね。「ものづくり」のお題目の下にどんどん下請け企業になっていくんです。利益率が2~3%という世界ですね。世界には、同じようなものづくり企業でも利益率が10%、20%の企業がある。それが体力の差です。体力がなければ、個人が頑張って差を埋めるのは難しい。

加藤 それは悪循環ですね。日本メーカーは体力を失って、10年の計で人材を育てられなくなっている。

宮田 「あきらめちゃえ」という風潮になりがちです。だから、私は2次電池や復興のプロジェクトをやろうと思った。そういうプロジェクトを機会に企業に変わってほしいと考えているからです。お手本を示さなければと思いました。私と一緒に働く優秀な若手が10人いれば、だいぶ変わると思います。

 どんなプロジェクトも必ず失敗する条件が二つあるんです。ご存じですか? 一つは、そもそものコンセプトづくりを誤っていること。もう一つは、チームづくりを誤ることです。他の部分は後で修正しても何とかなりますが、この二つの要素を誤ると絶対にプロジェクトは失敗します。例外はあり得ない。

加藤 悪循環にある日本メーカーは、チームづくりを変える必要がある。

宮田 成長している米国企業は、M&Aで社内に違う血を入れていますよね。本体の風土は、10年、20年かけないと変わらないからです。尖った発想を持つベンチャー企業などの血を取り入れて、それに投資して育てている。それを日本の大企業が自らそれを手掛けてほしい。でも、日本はベンチャー企業を下請けに使ってやろうという大企業ばかりで、やさしくないですよね。

 変わる力が重要です。自分が変わる力、周囲を変える力。人間は変わるのがとてもつらいので、なるべく変わらないようにしがちです。企業も同じ。責任とリスクが発生するのは、「変わろう」「変えよう」とするからこそです。変えることは、挑戦すること。私はそう思っています。