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 東日本大震災から1年近くが経過し、被災地の自治体が次々に復興計画をまとめつつある。一方で国内各地の自治体も、これまでの防災対策や環境政策では十分でないと、見直しを急いでいる。

 中でも見直しの中核になっているのは、エネルギー分野だ。これまでは大規模な発電所で集中的に電気をつくってそれを配電する「集中型」だったが、震災直後の計画停電などでその弱さが露呈した。再生可能エネルギー導入を含めた「分散型」への転換が急務との見方が広がっている。

 ただ、現在のところ分散型への転換に向けて広く合意がなされているわけではない。再生可能エネルギーのコストや原発の問題などが複雑にからみ合い、全体像がつかみにくいことから感情論に走ってしまうことさえある。そんな状況に一石を投じると期待されるのが、再生可能エネルギーの発電量や経済性のシミュレーションだ。実際のデータに基づく具体的な数字を明示できれば、一般市民を巻き込んだ、より建設的な対話が可能になるはずだ。

20年分の気象データを活用

 こうした期待を受け、再生可能エネルギーの供給能力や設備の採算性などをシミュレーションするサービスが登場し始めている。例えば、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が2011年12月に提供を開始するクラウドコンピューティング・サービス「E-PLSM(Energy/Economy/Environment/Ecology - PLatform for Simulation and Management)」だ。太陽光や風力による発電量や電力自給率、さらにはエネルギー効率を最大にするために必要な蓄電池の容量などを予測する。

 同サービスの使い方は簡単だ。まず、画面に表示された地図の上に、住宅や商業施設といった電力を消費する施設と、風力発電機や太陽光発電パネルなどの電力供給施設をドラッグ&ドロップで次々に配置していく。その後、それぞれの電力消費量や発電能力、施設間の接続状況、電力供給の優先順位などを設定すればよい(図1、図2)。

図1●E-PLSMにおける住宅や発電設備の配置画面の例
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図2●E-PLSMによる再生可能エネルギーの導入シミュレーションの例
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 E-PLSMのシミュレーションの土台になっているのは、CTCの科学システム事業部が1990年に開始した気象情報提供サービスのためのデータである。過去20年分の気象データに基づき、ある特定の場所と日時における日照時間や風量などをはじき出せる。そこから、風力発電機や太陽光発電パネルによる発電量を日時や月次、あるいは年単位などでシミュレーションするのである。

 これまでCTCは、風力発電や太陽光発電の事業化に向けたコンサルティングサービス(調査や設備設計など)にこの気象データを個別提供してきた。これとは別に同社は、都市や交通・運輸などの社会インフラを最適化するためのシミュレーション・サービスも提供している。12月に提供を開始するサービスは、この社会インフラの最適化シミュレーションのソフトウエアに、気象データを用いて風力・太陽光の発電量を計算するソフト、蓄電池のシミュレーション・ソフト、電気自動車(EV)のエネルギー消費量把握ソフトなどを組み合わせて開発した。

 同社科学システム事業部新エネルギー・インフラ事業推進部の福田寿部長は、「再生可能エネルギーの導入では、発電機器や制御機器のメーカーが自社の個別製品のみを前面に押し出して自治体に提案する例が目立つ。しかし、都市や地域におけるエネルギー問題の解決には、複数の要素をうまく組み合わせることこそが重要なはずだ。E-PLSMのシミュレーション結果を土台に、採算性を含めた、より複合的な視点からの議論につなげてほしい」と話す。