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 一方のKodakはアメリカが本拠地。しかも、ニューヨーク州北西部でカナダにも近いロチェスターが本拠地です。きっと、デジタル化の中心である日本とは遠く、デジタル化を推し進める企業の攻勢を肌で感じることは難しかったのではないでしょうか。

 もちろん、Kodakも市場調査をしたでしょうから、既存のカメラ・メーカーであるニコンやキヤノンとは頻繁に交流していたでしょう。しかし、既存のカメラ・メーカーの多くは、自分の市場を守るため、できるだけデジタル化を押しとどめたいと考えていたはずです。

 残念ながら、既存市場のプレーヤーと会話していても、新しい市場はわからないのです。デジタル技術を武器にカメラ市場への新規参入を狙うカシオやソニーといった企業と、Kodakがどれだけ交流できていたのか。Kodakがせめてシリコンバレーなどアメリカの西海岸にあれば、Kodakの歴史は変わったのかもしれません。

 デジタル化のようなイノベーションといえば、Steve Jobs氏のようにインドに行って放浪して、禅をやって・・・というやり方もあるでしょう。でも、多くのイノベーションは、ちょっと異なる分野の人との交流や、技術の将来動向のヒントを貰うことなどから始まるのではないでしょうか。

 顧客や取引先といった正式な関係だけでなく、知り合いや友人からの情報も貴重です。1990年代に日本でデジタル・カメラが誕生した背景には、デジタル化に向けた、電子部品や機器など様々な分野の人の交流があったのではないかと考えています。

 翻って現在の日本を考えますと、円高や高い法人税、電力の制約などにより、製造業の海外移転が進んでいます。工場の海外移転は仕方ないですが、製品開発やマーケティングの拠点は日本に残って欲しいと考えています。

 現在の日本には素材、製造装置、半導体からセットやコンテンツまで、エレクトロニクス業界の様々な企業が集積しています。このような多様な業界が狭い地域に集積し、異なる分野の間で頻繁に人の交流がある。この日本の強みを生かして、ぜひ次のイノベーションの波を作り出していきましょう。

 最後に、私が東芝でのフラッシュ・メモリ開発やMBA留学、東大での研究を通じてつちかった、技術経営やキャリア論をまとめた本、「世界で勝負する仕事術 最先端ITに挑むエンジニアの激走記」が出版されました。興味がある方は読んで頂ければ幸いです。