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スマートシティプロジェクトの中でもスタート

 一方、系統電力網から切り離されたスマートシティプロジェクトの中で、デマンドレスポンスの実施を試みる例も出てきた。

 経済産業省主導で、全国4地域で進んでいるプロジェクト「次世代エネルギー・社会システム実証」のうち、北九州市のプロジェクトでは、新日本製鉄が出資した天然ガス発電所である「東田コジェネ」を集中電源と見立てて、同社が持つ自営線を使って各戸に電力を供給することによって、電力の需給状況に応じて電力料金を柔軟に変える「ダイナミック・プライシング」の実証実験を検討、2012年4月にスタートさせる。

 計画では、地域内の家庭200戸と、700の事務所を対象に、翌日の電力予測に基づいて30分単位で電力料金を通知する。需要が大きい時には高い料金を設定することで消費者の行動を促し、これによって電力をどの程度抑制できるかを検証する。

 「次世代エネルギー・社会システム実証」のうち、横浜市のプロジェクトでは、国内で初めてオフィスビル向けのデマンドレスポンスの実証事業を開始する。2011年12月に東芝、丸紅、三井不動産、三菱地所の4社が発表した。

 具体的には、各社が保有する「みなとみらいグランドセントラルタワー」「横浜三井ビルディング」「横浜ランドマークタワー」の各ビルを統合的に管理するBEMS(ビルエネルギー管理システム)を導入する。地域レベルのCEMS(地域エネルギーマネジメントシステム)からの電力エネルギーの需要管理指令に基づき、各ビルの電力使用状況に応じて使用量を割り振る仕組みを検討するという。

「日本版デマンドレスポンス」の議論を

 こうした動きの先には、電力会社管内でいかに本格的なデマンドレスポンスを推進するかという課題が控えている。一つの突破口になりそうなのが、東京電力管内でスマートメーターの全面導入が進められていることだ。2012年1月22日付の日本経済新聞の報道で明らかになったところによると、東京電力は更新期を迎える電力計から順次スマートメーターに置き換え、2018年度までに約1700万世帯に全面導入する。

 これまで日本では、2010年6月に発表された改定エネルギー基本計画で、「2020年代の可能な限り早い時期に原則全ての需要家にスマートメーターを導入する」という方針のもと、東京電力は「2010年末から2~3年かけて約9万戸を対象にした実証実験を行う」としていたが、全面導入の意向を示し、時期を明らかにした意味は大きい。

 日本の電力会社がこれまでスマートメーターを導入してきた第1の目的は、検針の自動化だったが、全面導入決定の背景には今後深刻化する電力不足、電力料金高騰を見据えて、デマンドレスポンスなどの省エネサービスを展開するためのツールにしようとのもくろみがある。デマンドレスポンスの実施には必ずしもスマートメーターが必須というわけではないが、米国ではスマートメーターの双方向通信機能を活用したデマンドレスポンスの導入が活発化し、効果も見え始めたことが影響していると思われる。

 今後、一括受電サービスの一環としての閉鎖系デマンドレスポンスや、実証プロジェクト内で行われている実験データが蓄積されていく。このデータによって消費者行動などを分析し、さらに今後の電力供給状況、電力制度の改革の行方を踏まえて、日本版のデマンドレスポンスのあり方を議論していく必要があるだろう。

この記事は日本経済新聞電子版日経BPクリーンテック研究所のコラム「クリーンテック最前線」から転載したものです。