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 先日、高性能アナログICを手掛ける米Linear Technology社にBCP(事業継続計画)への取り組みを取材する機会がありました。既にご存知の方も多いかと思いますが、同社は4~6カ月分もの在庫をウエハーの状態で保管しておく「ダイバンク」と呼ぶユニークな取り組みをしています(関連記事)。

 一般に半導体は前工程(ウエハー処理工程)のリードタイムが長く、高性能アナログICの場合、12~14週間もかかります。さらに後工程(パッケージ組み立て/テスト工程)に平均4週間かかるため、完成品ができるまでには16~18週間もの期間が必要になります。災害によって半導体工場が止まり、別の工場で代替品の生産を開始しても、なかなか完成品が出てこないのはこのためです。

 これに対しLinear Technology社のダイバンクでは、前工程を終えたウエハーを利用できるため、パッケージ組み立てやテストを済ませれば平均4週間で完成品が出来上がります。実際、タイ洪水の際には自動車向けアナログICを生産するロームの工場が被災したため、Linear Technology社に代替品の注文が殺到しました。その際、「平均4週間という納期の短さが顧客に高く評価された」とリニアテクノロジー 代表取締役の望月靖志氏は語っています。

 通常、在庫を持つことは「悪」と思われがちですが、アナログICではパッケージ組み立て後の最終テストに最もコストが掛かるため、ウエハー状態で保管しておけば、リスクを軽減できます。実際、同社の2011年度の決算資料を見ると、売上高14億8000万米ドルに対し、ダイバンクの在庫金額は4500万米ドルしかありません。しかも、同社が手掛けるアナログICは、製品寿命が10年以上と長い産業・計測・医療機器向けが大半ですので、在庫が売れ残るリスクも低いというわけです。

 さらに同社は前工程、後工程とも生産拠点を2カ所以上設けており、災害などによって一方の生産拠点が止まっても、もう一方で代替生産できる体制を構築しています。また、ダイバンク自体も世界の3拠点に分散させることで、災害時のリスクを軽減しています。

 こうした取り組みは、高付加価値のアナログICに特化した同社の事業戦略と一体のものであり、他社がすぐにまねることは難しいかもしれません。それでも、東日本大震災とタイ洪水を立て続けに経験した日本メーカーの中には、Linear Technology社の取り組みを見習う動きもあるようです。

 同社は1981年の創業時から「日本メーカーに負けないものづくり」を目指してきたといいます。このため、独自の汎用製品や自前での製造、強固なBCPにこだわってきました。顧客がいる限りディスコン(製造中止)をしないという方針も、同社ならではの特徴です。かつてはお手本とされた日本メーカーが、Linear Technology社から学ぶところは多いと感じました。

 なお、日経エレクトロニクスではBCPに焦点を当てた特集記事を企画しています。この話の続きは、特集の中でも取り上げる予定です。ご期待ください。