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FUKUSHIMAレポート〜原発事故の本質〜、FUKUSHIMAプロジェクト委員会著、日経BPコンサルティング、945円、2012年1月
FUKUSHIMAレポート〜原発事故の本質〜、FUKUSHIMAプロジェクト委員会著、日経BPコンサルティング、945円、2012年1月
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 「月夜の晩ばかりじゃないんだぜ、なんて知らない人から突然声を掛けられるかもよ」

 何度となくそう脅された。「FUKUSHIMAプロジェクト」の企画案を友人など親しい人たちに説明していたときのことである。

 プロジェクトに参加していただいた委員の方が「正直言ってちょっと怖い」と漏らされているのもお聞きした。別の委員の方からは「大丈夫、命まではとられないと思うから」と励まされた。

 けど、こうもおっしゃる。「まあ、いろいろあるけどね。僕なんか実際に沢山経験したから」と。

 別に、悪いことをしようとしているつもりはない。FUKUSHIMAプロジェクトの目的は、「福島第一原子力発電所の事故について自らの手で調べ、これが本当らしいということを何にはばかることなく表明しよう」ということである。表も裏もない。ただ、この「何にはばかることなく」ということが、実はとてもやっかいなことであることも、一応、大人だから知っている。知っているから怖くなるわけだ。

 そんなこともあり、もろもろ配慮して、あえて角を立てない。それを大人の対応という。大概のことは、それでいいのかと思う。けれど、この原発事故の検証だけはちゃんとやらなきゃダメでしょ。そう思い込んでしまったのは、自分が広島で育ったことと無縁ではないかもしれない。

 そうだとして、その仕事を既存メディアの枠組みのなかで遂行することができるか。やったとして、どれだけ多くの方に納得してもらうことができるのか。そこで考え込んでしまった。事故発生後の報道をながめつつ、「何を信じていいのかさっぱり分からない」と自分も思い、多くの人から同じ感想を聞いていたからである。

 そこで考えた。メディアの経済原理から逃れ、国や特定企業の資金や庇護を頼らず、サイエンスやテクノロジーの本質を熟知している人たちを加えたチームによって調査を進め、本を出版しようという計画である。これを実現するために、寄付金を集め、それを原資として調査と出版を進める。プロジェクトのメンバーは無給で、印税も放棄する。

 それを聞かされた多くの人達は「そんなこと、できるはずがない」と感じたと思う。もちろん口では「いや、実に社会的意義のある話ですね、陰ながら応援させていただきますよ」と言ったりするわけだけど。そもそも自分にだって、できるという確信はなかった。

 それが、できてしまった。その証拠が、この本である。出版に必要な資金は、すべて寄付金によってまかなわれている。お申し出いただいた多くのボランティアの方たちに、調査、プロジェクト運営などを手伝ってもいただいた。

 その結果としてみえてきたのは、これまで多くのメディアを通じて語られていたこととはかなり違った結論である。重要な立場におられた方から、それを裏付ける貴重な証言もいただいた。

 こうして出来上がった本を何人かの方に読んでいただき、感想をいただいた。その代表的なものが、「よくここまで書いたねぇ」というものだ。

 覚悟は決めてやったつもりだけど、そう言われるたびに実は、少し背筋がぞっとしたりするのである。

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