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 太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギー導入に向けては、復興に向けた日本はもとより、世界各国が、その取り組みを推進している。日本の再生可能エネルギー関連事業会社にしても、海外での事業機会拡大を模索している。米国や欧州の再生可能エネルギーにからむ事業機会について、同分野に詳しい国際法律事務所ジョーンズ・デイのパロアルトオフィス パートナーで、再生可能エネルギー/ 持続可能性プラクティスのグローバルヘッドを務めるトッド・ジョンソン氏らに聞いた。(聞き手は志度 昌宏=日経BPクリーンテック研究所)

――法律事務所と再生可能エネルギー事業との関係は。

国際法律事務所ジョーンズ・デイで、再生可能エネルギー/ 持続可能性プラクティスのグローバルヘッドを務めるトッド・ジョンソン氏

ジョンソン氏 ジョーンズ・デイは、M&A(合併・買収)や事業投資などにおける法規制対応やリスク管理といった国際業務を手がける法律事務所だ。世界の37拠点にオフィスを持ち、2500人以上の弁護士を抱える。石油会社やガス会社、あるいは電力会社などのユーティリティ企業などは、主要な顧客層の一つだ。

 彼らが、環境対応や再生可能エネルギー分野に進出するに伴って、全世界の再生可能エネルギー分野の動向や法規制なども把握し始めた。現在は、同分野における法律関連サービスを提供しており、他の追従を許さない法律事務所になっている。

 日本においても20年以上の経験がある。これまでは主に、日本市場に参入したい企業に向けて、法規制対応やプロジェクトにおけるリスクマネジメントなどを手がけてきた。最近は、日本の技術やノウハウへの期待も高まっており、日本企業の海外進出などを支援できると考えている。

――まず米国市場について聞きたい。2011年には、米ソリンドラなど太陽光発電システムメーカーが相次いで経営破綻に陥ったり、発電パネルの低価格化が進展したりした。

ジョンソン氏 太陽光発電パネルなど製造分野をみれば、2011年は確かに厳しい年だった。中国メーカーの2007年から2011年にかけての急拡大に伴い価格は急落した。加えてユーロ危機が発生したことで大型プロジェクトの見直しやFIT(Feed in Tariff、固定価格買取制度)の下落もあった。まさに「ワン、ツーパンチ」に見舞われた状況といえる。

 一方で、2011年は太陽光発電や風力発電が大量導入された記録的な年でもある。導入量は今後も伸びる。パネル価格の急落やFITの下落などは、むしろ短期的な影響にとどまるだろう。

 太陽光発電の市場は、その誕生から30~40年しか経っていない。本格化したのは、ここ10年程度のことだ。今後は再編の時代を迎え、企業の統廃合によって事業者数は減るだろうが、市場は拡大する。日本の大手には大きなチャンスだといえる。

――再生可能エネルギーに関わるエネルギー政策が選挙戦で大きな話題になっている。

ジョンソン氏 米国ほど、エネルギー政策が政権争いに利用されている国はない。石油なのか再生可能エネルギーなのかなど、いずれか一つを選ぶという問題ではないにもかかわらずだ。

 ただ、詳細を説明するのは難しいが、連邦政府の政策の変化は補助金の差程度のものでしかない。それ以上に重要なのは各州の政策だ。例えばカリフォルニア州は、再生可能エネルギーの利用率を2022年までに33%にまで高めることを決めている。現状は17%だ。そこでは、送電網の見直しや蓄電池の設置といった大きな投資が発生する。

――マドリッド オフィスのパートナーであるルイス・ムノツ氏に聞く。欧州市場はどうか。

ムノツ氏 欧州は米国とは異なる市場構造を持っている。確かに、財政赤字によって優遇策の投入が難しい状況下にはあるが、再生可能エネルギーの導入率に対し、例えばスウェーデンは2022年に49%、ドイツは2050年に85%の達成を義務化している。つまり、法的な確立性があるわけで、企業にすれば合理的な利益が期待できる。

 スペインにおいても、FITの上昇を抑えなければならず、再生可能エネルギー関連施設の増設ペースを抑える傾向にあるが、数が増えることは確実だ。またスペイン企業が強みを持つ南米市場を対象にしたプロジェクトも少なくない。これら様々なプロジェクトが技術と資金を必要としている。特にスペインにおいては、太陽光発電や風力発電よりも、太陽熱発電に対する期待が高い。

――再生可能エネルギー分野での日本企業の海外進出では、ODA(政府開発援助)や政府主導の実証実験に参加するスタイルが目に付く。

ジョンソン氏 日本企業が種々のプロジェクトに入札する機会が増えるだろうし、それが期待されている。米国のプロジェクトにおいては、自社製品を提案・使用するためにはエクイティ投資が条件にもなっている。

 市場参入の方法としては、例えば参入した市場の地元企業を買収しノウハウを早期に手に入れることも考えられるし、独自に展開することもできる。

 当事務所の顧客である独電力大手のE.ONは、米国市場参入に当たり前者の方法を採った。また仏石油大手のトタルが、米国の太陽電池メーカー、サンパワーに出資した際は、出資比率を60%とし、サンパワーの経営人をそのまま残した例もある。日本企業もこれらの投資策を検討しているはずだ。

 ただいずれの形にせよ、素早い行動と創意工夫が必要はことには変わりがない。半導体基板や太陽電池の素材であるポリシリコンの価格は、ここ数年で激しく下落した。価格のみの競争になっており、そこでは従来型のビジネスモデルが成り立たなくなっている。

 太陽光発電パネルの市場も同様の傾向にある。それだけに、例えば設置から発電、保守までを垂直統合することで、個々には安価でも全体として利益がだせるようなビジネスモデルに切り替えていく必要がある。1970年代に日本の自動車メーカーが海外投資したように、再生可能エネルギー分野においても将来の巨大市場を獲得するためにチャレンジするタイミングが訪れている。