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再生可能エネルギー導入に積極的な国の一つが英国だ。洋上風力発電といった大規模開発や、全家庭へのスマートメーターの導入、ROI(投資対効果)の高いスマートグリッド構築などを展開する。同分野の実証実験などを管理する英国エネルギー技術研究所(ETI)ストラテジー・マネジャーであるリアム・リッドストーン氏に、実証実験の方向感などを聞いた。(聞き手は志度 昌宏=日経BPクリーンテック研究所)

——英国エネルギー技術研究所(ETI)の位置付けと役割は。

写真1●英国エネルギー技術研究所(ETI)のストラテジー・マネジャーであるリアム・リッドストーン氏
写真1●英国エネルギー技術研究所(ETI)のストラテジー・マネジャーであるリアム・リッドストーン氏

 ETIは、エネルギー政策の実現に向けて、スマートグリッド関連の実証実験を推進する半官半民の組織だ。英国は、温暖化ガスの排出量を2050年に1990年比で80%削減するという目標を掲げている。この達成に向け、EITが戦略を打ち出し、そのためのエネルギー関連技術を検証する。

 民間企業のメンバーは、石油大手のBPとシェル、電力大手のEDFエナジーとE.ON、エンジン関連大手のロールス・ロイスとキャタピラーの6社だ。全社がすべてのプロジェクトに関わるのでなく、それぞれが関心のあるテーマを選んで参画している。BPとシェルの例でいえば、CSS(Carbon Capture & Storage、二酸化炭素の回収・貯留)やバイオエネルギーの関連技術に興味を持っている。いずれも、ETIの主要プロジェクトである。

 ETIが手がけるプロジェクトには三つのレベルがある。知識構築(Knowledge Building)、テクノロジー開発、テクノロジー・デモンストレーションだ。知識構築の予算は500万ポンド以下で期間は6~24カ月、テクノロジー開発は予算が500万から1500万ポンドで期間は2~4年になる。テクノロジー・デモンストレーションには、1500万~3000万ポンド、3~5年をかける。

 各プロジェクトは、地域の当局者や参加する団体、組織などと密接に連携して実施する。結果については、その地域にとってだけでなく、英国全体にどんな適用可能性があるのかといった視点で評価している。

——エネルギー関連技術は幅広く、それぞれに多様な研究がなされている。投資対象をどう見極めているのか。

 これからのエネルギー・システムを構築していくうえでは、“後悔しない”技術選定が重要だ。そのため、「ESME(Energy System Modeling Environment)」と呼ぶモデリングツールを開発し各種テクノロジーを評価している。

 ESMEがカバーするのは、電力、熱、運輸、そして送電網やストレージ、パイプラインといったエネルギー・インフラだ。これらのエネルギー・システム全体をみながら、どんな要素が互いにどう作用するかを検証し、最も安価に実行できるエネルギー・システムを見つけ出す。その過程では、あるエネルギー技術が持つ課題を戦略的に克服できれば、全体として効果が高まるかどうかなど、各技術の限界も検証することになる。

 ETIでは数年前からESMEを利用している。2011年に国際対応版が完成したことで、英国内だけでなく世界中でESMEによる技術評価ができるようになった。

——今後の重点投資分野はどこか。

 運輸、海洋、CSS、バイオ、洋上風力、そしてネットワークだ。もちろん、後悔しない技術については常に議論しているし、重点分野以外にも投資はしている。それらに含まれていない技術も、「英国にとってコアコンピテンシーではない」という判断であって、他国においては有益な技術であるかもしれない。

——スマート化においてはICT(情報通信技術)の役割が高いと思われるが、ICT分野の取り組みはどうか。

 ETIとしては、ICT単独では評価していない。ICTは新しいエネルギー・システムを実現するためのエネーブラーとの位置付けだ。つまり、発電などの技術がどこまで発展するかを評価したうえで、それをシステムとして実現するためにITが存在する。

 実証実験においても、これまではICTがからむプロジェクトは少なかった。今後は、ICT関連プロジェクトも増えるだろう。従来のプロジェクトが特定の課題を解決するための実証だったのに対し、これからはスマート化を実現するための実証が重要になってくるからだ。

 そうした認識の好例が、2011年6月に発足した業界団体スマートグリッドGBだろう。大手ITベンダーや通信事業者などが参加し、スマートグリッド関連の知識の共有を図っている。2012年2月28日には、日本のスマートコミュニティ・アライアンス(JSCA)とスマートコミュニティ分野の協力についてMOU(覚書)を締結した(写真2)。

写真2●英国のスマートグリッドGBと日本のスマートコミュニティ・アライアンス(JSCA)は、スマートコミュニティ分野の協力について覚書(MOU)を締結した
写真2●英国のスマートグリッドGBと日本のスマートコミュニティ・アライアンス(JSCA)は、スマートコミュニティ分野の協力について覚書(MOU)を締結した

——ETIと日本企業との協業の可能性はあるか。

 具体的な案件がみえているわけではないが、英国内のプロジェクトを共同で進めるなど可能性は十分ある。エネルギーのサプライチェーン構築を目指す「Smart Energy System」プロジェクトなども開発中だ。また、廃棄物からのエネルギー再生や熱移送などは、日本が持つ有望な技術分野だろう。