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復興を東北任せにしない

 松岡担当理事と内藤副区長らの立脚点も、海外勢と基本的には変わらない。松岡担当理事は“お裾分け(Share)”をキーワードに挙げ、「復興は東北だけの課題ではなく、日本全体、世界全体の課題でもある。解決を東北任せにするのではなく、世界の知恵を借りながら、その結果を世界で共有すべきだ」と指摘した。

 こうした議論の流れは、続くパネルディスカッションIIにも引き継がれた(写真2)。パネリストとして登壇したのは6人。岩手県、福島県、宮城県からそれぞれ推薦を受けた、岩手大学の船崎健一教授、奥野翔建築研究所の奥野翔会長、国際航業の小山英治・第一技術部部長と、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)のドルフ・ギレン イノベーション・テクノロジー・センター長、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の渡邊宏理事、日本大学の加藤康司教授である。

写真2●東北3県の復興計画づくりに参加する識者や、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)のドルフ・ギレン氏らが登壇したパネルディスカッションIIの様子
写真2●東北3県の復興計画づくりに参加する識者や、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)のドルフ・ギレン氏らが登壇したパネルディスカッションIIの様子

 ここでは各県の復興計画の基本的な考え方の紹介に続き、再生可能エネルギーを復興計画にどう取り入れていくか、完成後のスマートコミュニティの運用・維持をどう継続していくかなどが、雇用創出を絡めて議論された。

 議論の中でたびたび指摘されたのは、時間の長さである。ギレン氏は「一気にすべてを再生可能エネルギーに置き換えられるわけではない。エネルギー源の切り替えには何十年もかかる。この間をどう考えるかが重要だ」と指摘。船崎教授も「新しい取り組みを支えるには新しい人材が必要になる。次の世代に向けた人材を育成することが大学の役割になる」とする。

 また加藤教授は、「パネルディスカッションIに登壇した海外のリーダー像を若者に見せるべきだ。そうすれば『こんな仕事をやりたい』というイメージが明確になり、若者が自ら国際競争に負けない人材に育っていく」との持論を展開した。

 こうした議論の結果まとめられたのが記事の冒頭で紹介した提言である。同時に、被災地におけるスマートコミュニティの構築で重要なキーワードとして「人を中心に」「再生可能エネルギーの推進」「安心・安全の確保」「経済性と快適性の両立」「新産業・雇用を創出」の五つと、これらを束ねる「ビジョンを策定」が示された(写真3)。

写真3●2つのパネルディスカッションを経てまとめられた提言と、東北への5つの適用要素
写真3●2つのパネルディスカッションを経てまとめられた提言と、東北への5つの適用要素

 実は、同セミナーの前日に実施された現地視察で、海外のプロジェクト・リーダーたちは津波や原発事故で大きな被害を受けた南相馬市を訪れ、更地と化した沿岸部や、集積されたがれきなどを目にしている。マスダールシティのアラミラ・ヌール・バニ・ハシム都市デザイナーは「復旧のスピードに感銘した。日本はやはり素晴らしい」と思いを語った。セミナーに参加したアフリカ圏のある政府関係者は「我が国で日本の技術やノウハウが定着した産業分野もある。今後の日本に期待するところは大きい」と感想を述べた。

 被災地の復興は、これからが本番だ。世界基準で見れば、日本の取り組み姿勢や技術力は決して悲観するものばかりではない。復興という課題の早期解決と、時間のかかるエネルギー転換、人材育成などをどう立体的に編み込んで復興ロードマップを描くのか。今こそ日本の底力の発揮が求められている。

この記事は日本経済新聞電子版日経BPクリーンテック研究所のコラム「クリーンテック最前線」から転載したものです。