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今回紹介する書籍
題名:卖故事 让你的产品和身价高卖10倍的秘密
作者:黄学焦、趙彤
出版社:南方出版社
発行日:2012年1月

 今回から3回にわたって紹介するのは『卖故事 让你的产品和身价高卖10倍的秘密(日本語訳:ストーリーを売る あなたの商品とあなたの価値を10倍高く売る秘密)』という作品。このデフレの時代に、日本でも「いかに高くものを売るか」という書物は多く出されているが、本書はその答えを「ストーリー」だと言っている。全体的に言って、日本のビジネス書のトレンドを見ている人にとっては、大きく目が開かれるという内容ではないが、「必要なものを買う」から「欲しいものを買う」へ変わりつつある中国の人々(一部ではすでにもう「欲しいものを買う」が主流なのだろうが)が読む本、という観点で見ると興味深い。中国人の消費行動について考察するのには大きな助けになる本であろう。

 古い話になるが、四半世紀前、筆者が初めて北京に足を踏み入れた時、商品というのは店側が「売ってやる」ものであった。すでに改革開放政策が始まっていたので、政策的には「お売りする」という姿勢を目指していたかもしれないが、店側の態度としてはやはり「売ってやる」というものだった。それが北京に滞在した10か月の間に少しずつ変化が見え始め、ホテルなどではフロントに優秀なサービスをした従業員を貼り出し、表彰するようになった。そして今では「如何に物を買っていただくか」に腐心するようになった。25年のうちにここまで変化したということは、現代の中国人にとって「物を売る方法」は新しく、急に必要となった研究分野なのだろう。

 このような観点の下、本書を紐解いていこう。まず、表紙をめくるとこのようなキャッチコピーが目に飛び込んでくる。

「卖产品的时代结束了,买故事的时代开始了(物を売る時代は終わり、物語を売る時代が始まった)!」

 前回ご紹介した「销售女神」の中で「中国にないのは品物ではなく、いい品物だ」というような記述があったが、やはり中国の消費行動は大きな変化の時期を迎えているといえるであろう。今までは、いい品物(場合によっては品物でありさえすればいい)を売っていれば売れたのだが、現在では単に品物の質がいいとか安いとかいうだけでは売れず、それ以上の「価値」がなければ売れない。そしてその「価値」を高めるのが「ストーリー」なのである。「ストーリー」というのは簡単に言えば売りたい商品の来歴、エピソードなどのことだ。

 本書に出てくる例でいえば、自動車産業の祖、フォードは幼少のころよりとにかく「機械」というものが好きだった。そして父に連れて行かれたデトロイトで一台の自動車を見たときに彼は自動車に魅せられてしまう、というストーリーが続く。我々は「この車は時速何Kmで走る」と言われても心を動かされないが、フォードの生い立ちや自動車産業を立ち上げる際の苦労話、すなわち「ストーリー」には心惹かれる。つまり、「買いたい」という気持ちになるのだ。このように「ストーリー」の存在は、商品の販売に大変大きな影響を及ぼす。このことを説明し、それが商品の売り上げにとどまらず、人の価値も上げる、ということを本書では説いている。

 では、次回では、本書の構成をみながら、「ストーリーを売る」ことの重要性について読み解いていこう。