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 日本側からみれば「中国人側に会社を乗っ取られた」ということになるのだろう。だが、中国人パートナー側にも言い分はある。それは、日本人に理解できないほど、会社登記や会社運営は中国大陸では難しいということなのだ。日本人は、登記はあくまで登記としか考えていない場合が多い。日本では職業の自由が保障されているので、登記はいわば「届け出」程度にしか考えていないのである。しかし中国では、ある仕事を始めようとすれば、それに関わる様々な許認可、免許が必要になる。それらを取得し、あるときは交渉して、ビジネスを勝ち取っていくのである。それだけの思いをして会社を設立し、維持し、利益を出したのは中国側といえる。日本側が権利を主張したいと思うのであれば、そのことを最初にきちっと決めておくべきだ、という考え方だ。

 ここで、どれぐらい企業設立が厄介なのかをみていこう。参考のために、外資企業の設立のプロセスについても明示していく。

 企業登記は、「工商行政管理局」が中心となる。その管理局の手続きに付随する部局として、質量技術監督局、地域商務委員会、外貨管理局などへの申請が必要となる。そこで、税務、財務、労働、社会保険に関してそれぞれの担当部署に申請を出すのである。

 まず、工商行政管理局に企業名の登記(仮)を行う。ここでは、企業名は中国語と英語とを登記することになる。そこで注意したい点がいくつかある。民間企業の場合、最初に「中国」と「中国○○有限公司」と国名を付けてはならないルールになっている。「中国」とつけられるのは、国営企業や国家から認められた大手企業のみで、通常はつけられない。さらに、本社を明記した地域名もカッコ付でつけることになる。「○○貿易有限公司(広州)」などとなる。

 日本人からすると広州のローカルな企業のように見えるので、中国全土で展開する企業を運営する場合このカッコ地域名を付けたがらない会社があるが、中国ではどこで登記されている会社なのか明示する必要があり、このカッコ地域名を付ける必要がある。だから、どの地域で仕事をするのか考えて会社名も登記する必要があるのだ。

 会社名を決めると、次は、地域の商務委員会で外資企業登録(批准)証書の申請をすることになる。これがなかなか厄介で、申請のためには、会社定款、事務所の賃貸契約書やFS報告書が必要になる。けれど、まだ会社は設立していないので、事務所や店舗がうまく借りられない。ところが事務所や店舗が借りられないと申請ができない。まさに堂々巡りである。この商務委員会も地域によってやり方やルールが違うようだ。このように事情が複雑なので、先の例のように、全て中国人パートナーに委ねてしまうケースが後を絶たない。

 やっと最初の関門を越え、委員会で証書を取得できたら、また工商行政管理局に戻り営業許可証を申請することになる。ここでも、銀行口座も資本金もないので仮申請のかたちになり、その申請書を持って、中国の地元銀行で資本金用の口座、人民元取引の口座を開設することになる。そして、この銀行がまたくせ者で、なかなか口座開設の許可を出さないケースが多い。特に、地方銀行で海外企業の登記に慣れていない銀行は、まったく申請の方法を理解していない場合がある。何度窓口に行っても、やれこの用紙をさらに作成しろ、何かの証明書を持ってこいと、やることばかりが増えて、話がちっとも前に進まないケースが珍しくない。

 けれども、銀行に口座がないとお金の出し入れができず、商売を始めることができない。銀行の口座が6カ月がかりでやっと開けたということで、お祝いに大宴会をやった日本企業があるぐらいである。私もその席に同席したことがあるが、まるで、銀行口座が出来たことで、中国でのビジネスがあたかも成功したかのごとく喜んでいた社長さんがいた。それぐらい厄介だと思って間違いない。

 併行して、質量技術監督局で企業(組織)の番号を取得する手続きを進める。この部署の権限は大きく、仕事としては製品やサービスの品質、安全の全般について扱っている。模造品の取り締まりなどもこの部署の仕事になっている。