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ビジネスマンのための「行動観察」入門、松波 晴人著、798円(税込)、272ページ、講談社、2011年10月
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 従来成功した手法を採っているだけでは、新しい製品が生まれにくくなっています。こうした時代では、正しい“仮説”を出すことが、成功のカギを握ります。その仮説をきちんと出す近道が、「行動観察」です。

 行動観察は、「観察」「分析」「ソリューション(解決策)」の順で行います。まず、対象となる現場を観察する。次に観察結果を分析し、仮説(構造的な解釈)を出す。仮説を作るために、人間工学や心理学、民俗誌学などの人間に関する知見を活用します。続いて、その仮説に応じて適切な解決策を提供する。仮説が明確になれば、解決策の提案は比較的容易です。

 一般的なマーケティング調査では、調査対象者の数をできるだけ増やし、直接尋ねることでユーザーのニーズを探ろうとします。しかし、この結果からは表面的なニーズが分かるだけで、本質的なニーズと乖離する恐れがあります。

 一方、行動観察では対象者の数を絞り、深く調べることに注力する。私の経験から言えば、現場で対象者をじっくりと観察・分析した方が、新しい仮説が生まれやすい。

 対象者への観察時に求められるのは、自分の先入観や価値観を捨て去ることと、対象者との信頼関係を結ぶことです。対象者から教えていただく、という謙虚な姿勢で臨めば、先入観に捉われにくい。

 観察期間は、同じ対象であれば半日から4日間と短い。こうした短期間で対象者を深く知るには、対象者と信頼関係を結ぶのが重要です。

大阪ガス行動観察研究所 所長の松波 晴人氏
1966年、大阪生まれ。大阪ガス入社後、基盤研究所にて生理心理学、人間工学関係の研究に従事。2009年に行動観察研究所を設立。設立と同時に所長に就任。(写真:加藤 康)
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 マーケティング調査では一般に対象者に目的を教えませんが、行動観察の場合は目的を伝える場合が多い。案件によって目的に細かい違いはありますが、共通するのは「目の前の対象者を幸せにすること」。このことを告げた方が、強い信頼関係を結びやすくなります。

 ユーザーを観察してみると、作り手が想定した使い方と異なる方法で、製品を利用する場合があります。企業によっては、想定外の使い方を禁止したいとの声が出る。しかし、この想定外の使い方こそが、新しいニーズを知るためのきっかけとなります。

 行動観察は、いわゆる”頭が柔らかい”人が向きますが、論理的な思考も大切です。特に、分析の段階でプラスに働きます。だからこそ、技術者にも行動観察を知ってもらいたいですね。(談、聞き手は根津 禎)

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