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選択の科学、Sheena Iyengar著、櫻井祐子訳、1,700円(税込)、単行本、384ページ、文藝春秋、2010年11月
選択の科学、Sheena Iyengar著、櫻井祐子訳、1,700円(税込)、単行本、384ページ、文藝春秋、2010年11月
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 「パンの種類はどれがよいですか」「ケチャップは入れますか」「ピクルスは入れますか」「チーズはいかがいたしましょう」…。今や日本でもおなじみになった米国発のサンドイッチ・チェーン店で、矢継ぎ早に繰り出される質問に戸惑ったことのある人は、私以外にも多いはずだ。この「選択の科学」という本は、「選択できることが何よりも大事」という選択肢至上主義的な米国だからこそ成立したといえなくもない。著者はこの本の中で、人生におけるさまざまな選択が実は「発明」や「創造」に匹敵する重要性を持っていることを指摘する。選択を「決断」と同義で使っている部分も多い。

「6」がマジック・ナンバー

 消費者にとっての選択を論じた部分は、優れたマーケティング論でもある。例えば、著者は、選択肢が多いことに価値が置かれる米国においてさえ、選択肢が多すぎることは、消費者を混乱させるだけであることを指摘する。ひところ喧伝された「ロングテール」の限界もそこにあったとも語る。それだけなら並みの分析だが、この本は違う。著者は実験を通じて「6」前後という数が、売り上げを最大にする選択肢の数であることも明らかにする。商品開発やマーケティング担当の人にとって必読の書と言えるだろう。

 ただし、6が有効なのは米国での話。著者は、選択できることをどこまで重視するかは、選択にかかわる人の文化的背景に大きく左右されるとも指摘する。例えば、個人主義が強い文化と集団主義が強い文化での違いである。この本の中で特によく対比されるのが、(アングロサクソン系)米国人と日本人の違いだ。具体的には、著者が実施したいくつかの実験では、米国人は4歳の幼児でさえ自分の選択の自由を重視し、親が選択に介入するとストレスを感じる。対して、日本人は、家族や会社など所属する集団に選択を任せ、自分ではできるだけ決めたくないとする傾向が強いという結果になったとする。そして日本人は自分で決めることを強いられるとむしろストレスを感じる、という。そんな日本人にとっての、最適な選択肢の数には残念ながら言及はない。

 著者は「苦しい選択」ほど、早く決断すべきだとも指摘する。選択から逃げたり、先送りすればするほど状況が悪化するためだ。2010年11月に出版された本だが、東日本大震災以後、深刻になる一方の「決められない日本」を予言しているかのようである。他人任せの「リーダー待望論」ではなく、自分で選択・決断していくことこそ、日本再生の道である気がする。

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