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 今回のシャープの戦略はB2Cビジネスの立て直しではなく、自社の得意な技術を鴻海に供与する代わりに、鴻海に製品の販路を委ねるという決断をしたことになると思います。鴻海はシャープのブランドに大きな価値を見出しているのではないでしょう。世界的に価値のあるブランドがあれば鴻海もそれを求めるでしょうが、それがないからこそシャープは苦境に立っているのですから。

サムスンが強烈に意識しているもの

 シャープは鴻海との提携というよりB2Bに近い戦略をとりましたが、ソニーが推し進めるようとしているのが「4スクリーン(画面)戦略」であり、これは今まで通りB2Cビジネスの戦略です。ところが私にはこの戦略の意味があまりよく理解できません。

 自社が展開するディスプレイを使った事業のうち、テレビ事業が不振だから他のスマートフォン、タブレット端末、パソコンを含めて「4つの画面」で総合的にユーザーに使いやすい体験を提供しようとしているのだろうと思うのですが、具体的に何がどうというのがあまり見えてこないのです。

 たぶんソニーの製品で4スクリーンを所有してもらうと、ユーザーの側に立った使いやすい機能を提供できますよということなのでしょうが、そもそも強烈なソニーファン以外の消費者がそういう商品の選び方をするでしょうか?

 何かひとつ、他にはないパッと見て消費者が買いたくなるようなわかりやすい特徴を製品に持たせないと、まず製品自体を買ってくれないということになります。製品を買ってもらわないと、そして全ての4スクリーンを所有してもらわないとその恩恵に与れないというのも考えものだと思うのです。

 サムスンが日本市場で液晶テレビを出した2002年に、サムスン製と日本製液晶テレビの画質を店頭で仔細に比べてみたのですが、とうとうその差が私にはわかりませんでした。その後、その話を日本メーカーの液晶部門の事業部長にお話しする機会があったのですが、事業部長氏からこう言われました。

「30分見続けてみてください。当社製とサムスン製の違いが明らかに感じて頂けます」

 しかし、店頭で両社の製品を30分見続けることは現実的でないので実際にそうしておらず、その事業部長氏が仰ったことは検証できていません。ただひとつ確かなことは、液晶テレビを買おうとする消費者も私と同じく決してそういう比較をしないということです。消費者は見た目が同じ、機能が同じ、そして信頼性や品質が同じと判断したなら安い方を買うものなのです。

 2002年に日本市場に参入したサムスンは一旦日本から撤退します。日本の消費者は、サムスン製の商品をそのときは見た目が同じでも機能が同じ、そして信頼性や品質が同じと判断しなかったということでしょう。もしくは日本製というブランドに価値を見出したとも言えます。

 しかし今、スマートフォンではサムスンのギャラクシーは日本でも大きな人気があり、指名買いされるようになりました。状況が変化したと見てサムスンはスマートフォン以外のテレビでもでも日本市場再参入を計画しています。サムスンブランドが日本で認知されてきたと判断したのでしょう。