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 ですから、これからの製品開発は、単なる機能を提供してくれる製品開発ではなく、人びとが求める機能そのものを開発する必要があると思っています。これからの製品開発は、用途開発であり文化開発に繋がっていくのです。

 そのためには陳腐化した事業、コモディティー化した製品から脱却して新しい製品開発にシフトしていかなくてはなりません。ですから私はよく「陳腐化してしまった事業を転換するためにも、次の新しい尖がった製品開発を」と申し上げるのですが、そのときに決まって言われるのが次のような言葉です。

「それはわかるが、今いる社員を食べさせないといけないんだ。だからそんなことはやっている時間はない」

 それでは新興国にこれからも負け続けるのは明らかです。新興国に生産をシフトさせ、マーケットの望む製品に注力するという今の方向性は正しいと思います。しかしそれではやっと追い付けるだけです。

 幸いサムスンにしてもまだまだその領域で留まっています。確かに彼等は日本を研究して、ある意味では自社を日本以上に日本型の企業に育て上げ、更に今のグローバル化した世界市場にマッチするように作り上げてました。わき目も振らず強力に、そして迅速にそれを推し進めた結果が今のサムスンの姿なのです。

 自国のGDPが比較的小さいため、成長するためにはグローバルに展開しています。それもかなりのスピード感と思いきった投資で事業を行っています。そのような彼らに追いつき、再び凌駕するには、彼らがまだまだ十分に展開できていない、単なるアイデア商品を超えた新しい製品・サービスの開発、それも文化開発に繋がる領域において強力にかつ迅速に行うことが必要になってくると考えています。そしてまだ日本企業や日本社会にはそれだけの厚みが残っていると思っています。それが残っている今がラストチャンスかもしれません。

 「組織は戦略に従う」ものであって、決して「戦略が組織に従う」ということはあってはならないと思っています。組織を守るために戦略を考えたとたん、その戦略も組織もグローバルの市場では負けてしまします。日本のルールは通用しないからです。

 日本の家電が再び力を取り戻し、グローバルで一歩先んじるために、新興国にはまだまだできない新しい製品がもたらす文化を背景とした新しい用途開発を推し進めるときがきていると思っています。

 一度スマートフォンを使うとそれが手放せないように、一度シャワートイレを使うとそれがない生活に戻れないように、今までにない新しい生活を提供する製品作りを推し進めていく好位置に日本は今いるのだと思います。私もみなさんと一緒になって、日本から新しい製品やサービスの開発を進めていきたいと願っています。

生島大嗣(いくしま かずし)
アイキットソリューションズ代表
大手電機メーカーで映像機器、液晶表示装置などの研究開発、情報システムに関する企画や開発に取り組み、様々な経験を積んだ後、独立。「成長を目指す企業を応援する」を軸に、グローバル企業から中小・ベンチャー企業まで、成長意欲のある企業にイノベーティブな成長戦略を中心としたコンサルティングを行っている。多数のクライアント企業の新事業創出/新製品企画・開発等の指導やプロジェクトに関わる一方、公的機関等のアドバイザ、コーディネータ、大学講師等を歴任。MBA的な視点ではなく、工学出身の独自視点での分かりやすい言葉で気付きを促す指導に定評がある。経営・技術戦略に関するコンサルティングとともに、講演・セミナー等の講師としても活躍中。
生島ブログ「日々雑感」も連載中。
中国ビジネス書の翻訳出版本である「中国モノマネ工場――世界ブランドを揺さぶる「山寨革命」の衝撃」の監修・解説も担当した。