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 加えて、共通化を推進していく開発プロセスで、どこが固定部で、どこを変動部として残すのか、ルノーも交えて関係部署が徹底的に議論している点も興味深い。固定部がコストを意識して共通化する部分で、変動部が車の味を出して他社製品との差別化につながる商品力に直結する部分である。固定部を多くすれば特徴のない車となり、変動部を多くすれば、CMFの意義が失われてしまう。

 筆者が興味深いと言ったのは、車の構造は一見パソコン的になるが、仕事の進め方はより「擦り合わせ的」になっているからだ。日産車の開発では大きく3つの機能がある。プラットホームを開発したり標準技術を作ったりする車両計画と、個別の車種を開発するチーフビークルエンジニア(CVE)、サスペンションや電子制御といった個々の部品開発の3つだ。この3機能が、開発の源流段階で固定部と変動部をどう区分けするかを徹底的に詰めた。

 車両計画は標準化を推進することで固定部を増やしたい流れに陥る傾向にある。一方でCVEは特徴ある車を世に送り出すために変動部を多くしたい。部品開発は車の構造が複雑化したことで細分化されている。ややもすれば、意見の食い違いで調整がつかない。しかも、日産だけではなく、これにルノーの開発も加わるから複雑さが増す。

 こうした時に、ルノー日産アライアンスCEOオフィス室に所属する山本部長らが調整役となる。他社とのベンチマーク、これから出てくる新しい技術や規制、長期の製品戦略を考慮し、固定部と変動部を決めていった。

 「変動部はこれまでは完全フリーでCVEの裁量に委ねられていましたが、変動部であっても予め決めた技術や部品のバリエーションの中から選ぶ方がいいケースもある。一方でそれをやり過ぎると、固定部を増やし過ぎるのと同様に車の魅力が低下するかもしれない。どこまでなら大丈夫なのかを見極めることも自動車メーカーのノウハウです」と山本部長は言う。

 予め決められた部品や標準化された技術を組み合わせていくという意味で、レゴブロックを組み合わせていくイメージに近い。同じような「脱プラットホーム」に取り組む海外メーカーもあるが、部品のバリエーションを制限するという発想に重点が置かれているように思える。すなわち「部品屋主導」の「脱プラットホーム」といった感がある。これに対し、日産の取り組みは、車の構造全体を見渡す「車両開発主導」の動きに見える。

 CMFを進めるにあたって仕事が擦りあわせ的という点では、こんな事例もある。車両計画や車体、電子、部品設計などの関係部署を全部集めて、CMFの事務局がモジュールの構成と部品の共用化案を提示した後、対応できないケースがあれば、その理由をエンジニアに個別に徹底してヒアリングしたというのだ。CMFプロジェクトの初期段階では多くの工数がこのヒアリングに当てられたという。未知の世界への挑戦でもあり、本当にできるかできないかを慎重に判断しなければ、プロジェクトがスタートしても暗礁に乗り上げるリスクがあったからだ。