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 一方、日本のIT産業はどうでしょうか。現在、電機産業のリストラに関して、垂直統合から水平分業に変われば収益が回復する、といった論調が多いことに、少々心配をしています。単に水平分業化すれば良いというのは幻想でしょう。IBMやAppleのように、イノベーションをもたらすハードウエアはしっかり自社に統合する戦略も必要になります。

 ただし、ハード・ソフト・サービスを統合する際に、ハードウエアの事業を自社でどこまで手掛けるか、という判断が重要になります。ハードウエアの製造には莫大な投資が必要ですし、多くの雇用を必要とするなど、参入障壁は高い。また、一度、工場を立ち上げてしまうと、雇用の問題などから、市況に応じて撤退するなど、柔軟に対応することは難しくなります。

 つまり、ハード・ソフト・サービスを統合するからといって、自社で工場を持ち、製造すれば良いとは必ずしも言えません。

 製造方法で差異化することもできますので、もしハードの製造からソフト、サービスまで手掛けることができれば、最も最適化されたサービスを提供できます。ただ、それができるのは、既にフラッシュメモリの製造を手掛けている東芝など、ごく一部の企業に限られるでしょう。場合によっては、ハードウエアの製造は日本でなくてもよいし、海外企業に委託してもよいでしょう。

 現実のビジネスでは、IBMやAppleのように、巨額投資が必要なフラッシュメモリの製造は手掛けず、フラッシュメモリを制御するコントローラや、フラッシュメモリを組み込んだSSDを手掛ける企業を買収するというのが、費用対効果を考えた時に最適になるでしょう。

 今後のITサービスで必要な、ハード・ソフトまで含めた融合。単純な水平分業にすれば良いというのは、時代遅れになりつつあります。重要なのは、イノベーションをもたらすハードを生かし切る、ソフトやサービスを提供すること。そのためには、ハードウエアのどの部分を手掛けるのか、戦略が必要とされているのです。