自動車業界の生産海外シフトの動向
では、貿易特化係数を用いて、自動車業界のトレンドを確認してみよう。
図1は、自動車および自動車部品について、貿易特化係数の推移をプロットしたものだ(貿易統計の分類上、自動車部品は「自動車の部分品」とされている)。自動車については、中長期的には増加傾向である。国内で生産し、北米や欧州に対する輸出を大きく伸ばしてきたのである。
しかし、近年のトレンドを見てみると、それまで好調だった自動車の貿易特化係数も、2009年以後は減少に転じていることが分かる。この理由としては、自動車メーカーによるアジアへの生産シフトの影響が大きいと考えられる。日本の自動車メーカーの生産海外シフトについては、公開情報を解説にまとめたので、それを参照していただきたい。(解説:「トヨタ自動車のアジアへの生産シフト」を参照)
一方、自動車部品についてはどうだろう。中長期的に見ると、貿易特化係数は1998年には0.9だったが、2011年には0.7まで減少しており、海外シフトが徐々に進行していることが分かる。ただし、自動車が2009年以降この値を減少させたのに対し、自動車部品は2006年から2008年にかけて一時的に低下したものの、その後回復しており、自動車と同じ傾向とはなっていない。密接に関係があるはずの自動車メーカーと自動車部品サプライヤーが同調していないことは、興味深い点である。
同調していない原因として、2つの仮説が考えられる。1つは、現在はタイムラグが発生しているだけで、今後、自動車に追随して自動車部品生産も海外シフトが進行する、という仮説。もう1つは、自動車部品サプライヤーは自動車メーカーの急激な海外シフトに追随せず、今後も緩やかにグローバル化を進行させていく、という仮説である。結論はまだ出ておらず、今後の動向をさらに見守りたい。