自動車と自動車部品の海外シフト傾向が異なる理由

 ここまで貿易特化係数について論じてきたが、輸出額の規模についても、合わせて確認しておきたい。

図3●自動車・自動車部品の輸出額推移
財務省「貿易統計」から筆者作成
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 図3は、自動車と自動車部品の輸出額の推移を示したグラフである。2009年以降、自動車の貿易特化係数が減少に転じたことを説明したが、この図からも、自動車輸出額は2007年をピークに、2008年以降急激に減少していることが分かる。これは、その時期における自動車の貿易特化係数の低下と輸出額の減少に、相関があることの裏付けになる。

 一方、自動車部品についてはどうだろう。図3から、2008年はリーマンショックの影響で一時的に減少しているが、翌年からまた増加傾向に転じている。また、1988年の輸出額は約1.1兆円であったが、2011年には3兆円に達し、13年間で約3倍に規模が拡大したのである。これは、国内の自動車部品サプライヤーが少しずつ力を養い、国内の自動車メーカーだけでなく海外の自動車メーカーに対しても、営業力を付けてきたと言えるのではないだろうか。

 自動車部品サプライヤーは、自動車メーカーと比較すると、相対的に設備集約型生産である。これは、金型などの設備を用いて部品加工する工程が多くの部分を占めていることからも分かるだろう。
 自動車メーカーは、多品種化に対応するために労働集約型生産にならざるをえない。したがって、コスト削減を進めるためには、人件費のより低いエリアで生産することが得策である。しかし、自動車部品サプライヤーの場合は、設備集約型生産であるために、自動車メーカーと比べて人件費の影響が現れにくいのだ。自動車メーカーと、自動車部品サプライヤーの海外シフトの動向が異なっている原因には、それぞれの生産タイプの違い(労働集約型と設備集約型)が関係していると推測できるだろう。

 今回紹介した自動車および自動車部品の貿易統計データによると、両者の貿易特化係数は1988年以後0.65~0.9のレンジにあり、依然として圧倒的に輸出過多である。次回以降、他業種についても同様の分析結果を紹介するが、自動車分野のこの数字は他業種と比較してもかなり大きい。貿易赤字(輸入額が輸出額を上回る現象)が叫ばれる昨今であるが、自動車業界においては、日本製造業のものづくり競争力はまだまだ健在といえそうだ。

 次回は、電気・電子産業や素材産業についても同様の分析を行い、日本製造業生き残りのために、強化すべきプロセスについて考えてみたい。