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ゲーム機でスマホに似た事例の裁判

 本稿ではApple社対Android訴訟に焦点を当てて必須特許問題の行方を見てきているが、この一連の訴訟の中では米国ではっきりとした判決がいまだ出ていない状況にあることはすでに述べた。ところが、11月29日に米国において必須特許問題についての一つの判決がようやく出されるに至った。それは米ワシントン州西部地区連邦裁判所でのMicrosoft社とMotorola社との間の訴訟の略式判決で、Motorola社必須特許の侵害でMicrosoft社に対してMotorola社が求めた差止め請求を却下するものであった(事件番号10-cv-01823))。以下にこの事件の経緯をまとめてみよう。

 2010年10月にMotorola社はMicrosoft社に対して特許ライセンス許諾を提案する2通の書簡を送付した。1通は10月21日に発送され、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers; 米国電気電子学会)が策定した802.11無線LAN規格(一般にWLANあるいはWi-Fiとも呼ばれている)に関するMotorola社必須特許群について、妥当かつ非差別的な(reasonable and non-discriminatory; RAND)条件で全世界、非排他的なライセンスを供与するというもの(これまでFRANDという用語で話を進めてきたが、RANDも実質的にFRANDと同じ意味を表している。一般に、FRANDは欧州の標準化団体で使用されており、RANDは米国の標準化団体が使用している)。

 もう1通は8日後の10月29日に発送され、同様の必須特許ライセンス供与を提案する内容で、ITU(International Telecommunication Union; 国際電気通信連合)がISO(International Organization for Standardization; 国際標準化機構)およびIEC(International Electrotechnical Commission; 国際電気標準会議)と共同で策定したH.264動画圧縮規格に関するものであった。なお、書簡では対象製品の例として、IEEE 802.11がMicrosoft社のゲーム機「Xbox 360」、H.264はXbox 360に加えてパソコン/ラップトップ、スマートフォンを挙げていた。