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誰もやめない会社 シニア・エンジニアが活きる無敵のマネジメント、片瀬京子/蓬田宏樹著、1,680円(税込)、四六判、232ページ、日経BP社、2012年11月
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「今すぐなら会えるけど、どうする?」

 米Linear Technology社のカリフォルニア州ミルピタスにある本社を訪問した際のこと。広報担当者から意外な申し出があった。同社CTOであるBob Dobkin氏に会えるというのだ。

 Dobkin氏と言えば、アナログ回路設計の世界で、「グル(巨匠)」と呼ばれるスーパー・エンジニアの一人。Linear社の創業メンバーであり、創業から30年以上経過した今もCTOを務める。同様にアナログの巨匠であるJim Williams氏が2011年6月に死去しており、同社に残る数少ない現役グルの一人である。

 当初は残念ながら会えないと聞いていたが、スケジュール変更で出社しているとのこと。慌てて連絡し、10分だけ時間をもらい、さまざまな質問をさせていただいた。

 取材の最後に、「せっかくなので、写真撮影を。できたら居室の写真もお願いします」と頼んでみた。私が居室を撮影したいと思ったのは理由がある。“Jim Williamsの机”の話を聞いていたからだ。同氏の机は、各種のアナログ部品を実装した小型基板が山のように積み上げられていたことで知られる。同氏の死去後は、その机がシリコンバレーにある「Computer History Museum」に特別展示されたほど。Williams氏は、一見雑然とした机だが、どの基板がどこにあるか、すぐに探し出すことができたという。Williams氏の机は、「アナログ設計者のこだわり」(Linear社の元同僚)が満載されていた。

 この話を聞き、Dobkin氏の机を見たいと思った。しかし、「僕の写真はいいけど、居室は引っ越ししたばかりだから…」と、やんわり断られてしまった。

 この時は「残念だな」と思っただけだが、帰りがけに車を運転しながら「ハッ」と気が付いた。Dobkin氏が居室を見せられないと言ったのは、「引っ越しで雑然としている」からではなく、「新しい居室に入ったばかりで、自分らしいこだわりを盛り込めていない」からではないか─。Williams氏が自分の机の“デザイン”に強いこだわりを持っていたように、Dobkin氏も恐らく「自分らしい居室」という“アナログ回路デザイナー”らしいこだわりがあるのではないか、と。

 今回、このようなこだわりを持ち続ける技術者を多数抱えるLinear社について、書籍『誰もやめない会社』としてまとめた。業界で「巨匠」と呼ばれる技術者たちが、なぜこの会社に引き付けられ、なぜ定年まで勤務し続ける者が多いのか、その魅力に迫ったつもりである。ご一読いただけると幸いだ。

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