さて、一度問題開発が終われば、その問題の存在を知った人びとにとって、その問題を解くのは比較的簡単です。そして日本企業の技術者たちは、この能力に大変優れていると思っています。問題が可視化され、共有された後は、地道にその問題を解き、製品をブラッシュアップしていきます。
自動車産業や家電といった米国で形作られたといっても過言ではない、製品の大量生産に基づくビジネス・モデルは、最初に問題開発が主に米国でなされた後に、日本企業が究極までブラッシュアップしてきました。比較的最近まで日本企業の優位は揺るぎませんでしたが、昨今あっという間に新興国にビジネスを奪われています。
これは、日本が得意だった技術力を基にした問題解決能力の優位性は以前ほどではなく、今や賃金や投資、新興国のニーズに合った販売力、ビジネス・スピードなどがビジネスの優劣を決めるようになってきたからではないでしょうか。この部分に密接に関係するのが、3の環境開発や4の認知開発だと思うのです。
私は今までこの技術経営戦略考のコラム、例えば「日本の家電が負け組になった本当のワケ」、や「スティーブ・ジョブズ流が日本を救う道であるワケ(前編)」「スティーブ・ジョブズ流が日本を救う道であるワケ(後編)」で述べてきた通り、これからの日本が一番注力しなくてはいけないのは、今まで見えてこなかった問題を認識し、この問題を設定するという1の問題開発の部分だという思いは変わりません。